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記者の眼

日本と欧米、学会のメディア対応の違いに思うこと

 記事を執筆するために国内外の学術集会を取材する機会はかなり多い。ほとんどの学会は、取材を希望するメディアを受け入れてくれるが、欧米と日本では受け入れ方が異なる部分もある。取材経験がある海外学会は、日本人も多数参加するような基幹分野の年次学術集会にほぼ限られるが、取材という観点で見たスタイルの違いを紹介してみたい。

 欧米の大規模学会が主催する年次学術集会では、世界各国から集まるメディアのための受け入れプログラムを用意している。メディアに提供される主なサービスが、(1)プレスルーム、(2)プレスリリース、(3)プレスカンファレンス──の3つだ。

 「プレスルーム」の原語は「press working room」で、その名の通り記者が執筆するスペースだ。もう10年近く前のことになるが、海外学会として初めて、毎年秋に開催される米国心臓協会(AHA)学術集会に出向いたときは、プレスルームの規模に腰を抜かした。日本の学校の体育館よりも広いスペースに200~300席が用意され、それがピーク時にはほぼ満席に。そして誰もが必死に記事を書いていた。

 国内学会でもプレスルームを設けているところはあるが、海外の大規模学会では、プレスルームの開設時間中、広報担当者が常駐する点が異なる。彼らは記者の質問に答えたり、インタビューの要望を受けて発表者に連絡をとってくれる。

 2番目のプレスリリースは、企業がメディア向けに発行するものと似た報道発表資料だが、会長声明や学会賞受賞者の紹介などの公式発表だけでなく、一般演題の中から注目演題を紹介する。

 3番目のプレスカンファレンスは、主にプレスリリースで取り上げた発表者を特設会場に招いて行う記者会見で、発表者は集まった世界中の記者たちから、本発表とは別の切り口ながら厳しい質問にさらされる。

 日本の学会は、学術集会に先立って開催概要を知らせる記者発表を行うことはあっても、会期中に記者会見を行うことはまれで、「ルールを守って自由に取材してください」という形になっている。

 しかし、医学分野では専門が細分化され、医師・研究者でさえ隣の領域が見えにくくなっている。学会としては、プレスルームに人員を配置する予算がなかったり、プレスリリースを発行する場合、特定の先生の演題だけ特別扱いするのはいかがなものか、といった横並び意識が働いて、欧米の学会のようにメディアへの積極的な関与が難しいのかもしれない。しかし、いい意味で、もっとメディアの力を利用すべきではないか、と思う。

 海外の大規模学会のプレスルームでは、軽食や飲み物が提供されることもある。正直に言えば、日本の学会よりもずいぶん厚遇してくれるものだと当初は思ったが、フードコートに並ぶ時間があったらその分、記事を書けというプレッシャーであることに程なく気がついた。実際、次年度に再び同じ学術集会への参加を希望する場合、ほとんどの学会が、前年の学会について執筆した署名入り記事の提出を求めてくる。当然のことだろう。

 日本でも欧米と同じように記者を厚遇せよ、と主張する気は全くない。ただ、もう少し学会とメディアが連携できれば、有益ではないかと考えている。

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