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 診療所の新規開業の成否を分けるポイントの一つが、開業資金の調達。医療・介護の経営誌である『日経ヘルスケア』の取材では、新規開業した医師に対して、資金調達をスムーズにできたかどうかを尋ねることも多い。そこで返ってくる答えは、その時どきの金融事情を反映し、5年ほどのスパンで見ても随分話が違ってくることがある。

 最近開業した診療所の院長からは、開業融資に対する銀行の積極姿勢をうかがわせるコメントが寄せられる。だが、こんな話が出るようになったのはここ数年のことだ。1990年代末に銀行の「貸し渋り」が顕著になって以来、多くの医師が開業資金の調達で辛酸を舐めてきた。

貸し渋りの時代には門前払いも
 「まさに門前払いでしたよ」。1990年代末に開業したAクリニックの事務長は、融資を申し込んだ地方銀行の対応を、こう振り返る。当時は多くの銀行が、経営の健全度を示す指標である「自己資本比率」の引き上げを迫られて貸出金を縮小し、医師が診療所を開業しようとしても十分に融資してもらえないことが多かった。

 Aクリニックが融資を申請したのは、その地域の最も有力な地方銀行。それなりの担保や自己資金も用意していたものの、話すら聞いてもらえなかったという。結局、知人の紹介により別の地銀から借り入れたが、そこでも予定していた金額を調達できず、自治体の創業支援融資なども利用して何とか開業にこぎ着けた。

診療所が有力貸出先に“格上げ”された理由
 2000年代に入ってからも、開業融資を受けにくい状況はしばらく続いた。04~05年ごろには、大手都市銀行が無担保の「開業ローン」を設けるなど幾分状況が改善したが、それも束の間。08年のリーマンショックで、銀行はまた新規融資への慎重姿勢を強めることになった。

 ところが3年ほど前から、特に地方銀行の中に、診療所開業融資に対して積極的な姿勢に転じるケースが目立つようになった。医業コンサルタントで(株)ずのお代表取締役の二上吉男氏によれば、地方に有力な貸出先が少なくなったことが最大の要因だという。長引く景気低迷により大企業の工場閉鎖が相次いだり、公共事業が縮小したことにより、それまで有力な貸出先だった地方の企業が衰退。倒産リスクの少ない診療所が、貸出先として上位にランクづけられるようになったのだ。

診療圏調査や事業計画作成の代行など至れり尽くせり
 同氏によれば、地銀の積極姿勢には、日本政策金融公庫やノンバンクへの対抗措置の意味合いもあるという。日本政策金融公庫は2008年、政府系金融機関の国民生活金融公庫など3行が合併し株式会社としてスタートを切った。創設以来、診療所への融資に力を入れており、同時期にはリース会社などのノンバンクも新規開業向けローンを強化してきた。地銀としても、「有力貸出先」となった診療所を囲い込むため、積極攻勢をかける必要に迫られたわけだ。

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