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 世の中にはいろいろな記念日がある。2月14日の「バレンタインデー」、6月4日の「虫歯予防デー」くらいなら、多くの人が知っているだろう。日本記念日協会のウェブサイトで検索すると、5月15日が「Jリーグの日」(20年前の5月15日にJリーグが開幕したことから)、11月5日が「縁結びの日」(11と5で「いいご縁」と読む語呂合わせから)などなど、意外な記念日があって面白い。

 5月20日は「臨床試験の日(International Clinical Trials’ Day)」だ。これは、欧州臨床研究インフラストラクチャ―ネットワーク(ECRIN)という団体が定めたもので、1747年5月20日に、スコットランド人医師のジェームズ・リンド(1716~94)が、世界で初めて臨床試験を行ったことに由来する。

 海軍軍医であったリンドは、壊血病の12人の水兵を6群に分け、毎日の食事は同じにした上で、各群に異なる酸味のある食べ物を食べさせた。その結果、柑橘類を食べた2人だけが回復したという。ビタミンがまだ知られていない時代に、柑橘類(に含まれるビタミンC)と壊血病との関係を疫学的に突き止めたわけだ。このエピソードは、東京慈恵会医科大学の創設者である高木兼寛が、海軍の食事に麦飯を取り入れるなどして脚気を撲滅させたことを思い起こさせる(もっとも、リンドの方が100年以上古い)。

 欧州では「臨床試験の日」を記念して、毎年5月20日前後に会議が開かれている。インターネット上に公開されているプログラムによると、今年は、ヘルシンキ宣言の改訂や抗癌剤の代用アウトカムなどがテーマになっていた。

 個人的に、ぜひ取り上げてもらいたいテーマがある。臨床試験の出版バイアスの問題だ。出版バイアスとは、研究の実施者や資金提供者にとって都合のよい結果が出たら出版されやすいが、都合の悪い結果が出たら出版されにくい現象のこと。出版バイアスがあると、治療法の有効性の過大評価と安全性の過小評価につながりやすく、真の評価ができなくなる。最終的には患者にも不利益が及びかねない。

 出版バイアスを避けるため、全ての臨床試験の登録と結果の公表を求める国際的なキャンペーン活動「AllTrials」が始まった(関連記事はこちら)。ジェームズ・リンドが自ら行った臨床試験の結果を著作『A Treatise of Scurvy』にまとめたように、得られた知見を後世に伝えるため、そして被験者に対する責任を果たすためにも、全ての臨床試験は結果にかかわらず公表するのが筋だと思う。私も「AllTrials」に署名しました。

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