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 先日、分包機や電子てんびんといった調剤機器のメンテナンスに関する取材で、薬局の調剤室に入り調剤の様子をじっくり見学する機会を得ました。 恥ずかしながら、これまで患者として薬局を利用したときは、処方箋を出せば、すぐに薬が出てくるのが当たり前のように思っていました。

 しかし、実際に調剤する様子を見て、処方箋を受け取ってから患者さんに薬を渡すまでに、想像以上に多くの工程があることに驚きました。忙しく作業する薬剤師さんたちを見ながら、次々に来る処方箋に対して、正確さはもちろんのこと、スピードも求められる調剤業務の大変さが少し実感できました。

分かりやすい処方箋を
 ところで、医師の皆さんは、自分が出した処方箋が、薬局でどのように処理され、患者に薬が渡っているか、想像しながら処方箋を書かれていますか。 

 1枚の院外処方箋から薬局薬剤師が得られる情報は、非常に限られています。処方箋には診断名は書かれていませんので、薬剤師は、患者さんがぽつりぽつりと話してくれる情報を頼りに、例えば抗ヒスタミン薬が出ている場合は、花粉症の治療なのか、あるいは蕁麻疹に対して処方されたのかを推測しながら、調剤や服薬指導をしなければならない仕組みになっています。9カ月前に薬剤師向けの雑誌『日経ドラッグインフォメーション』を担当することになり、私が最も驚いたのは、この部分です。

 薬剤師にとって唯一の情報源である処方箋。その処方箋に不備があると、薬剤師は困ってしまいます。例えば、処方箋に「テオドール」とだけ書かれていても、テオドール錠50mgなのか、テオドール錠100mgなのか、テオドールシロップ2%なのか、テオドールドライシロップ20%なのか、分かりません。しかし、残念ながら、こうした処方箋少なくないといいます。また、処方箋だけでは医師の処方意図が分からないこともしばしばあると聞きます。

 処方箋の処方欄には、用法用量だけでなく、服用の際の留意事項も記載するようになっています。また、備考欄は、薬局が調剤を行う際の留意事項を記載するために設けられています。ですので、医師の先生方には、これらの欄に少しでも、薬剤師の服薬指導に役立つ情報を書いていただければと思います。

 例えば、疾患名や処方意図、薬の変更や増減がある場合はその理由を、軟膏を処方する際には、どのくらいの量をどう塗ればいいのかなどです。この点について、厚生労働省の医政局医事課に問い合わせたところ、処方箋を受け取る患者さんの気持ちや、個人情報への配慮などが必要であるものの、基本的には、患者のメリットになることであれば、処方箋に処方意図や詳しい薬の使い方などの情報を記入することについて少なくとも禁止する規定はないそうです。

 当たり前の話ですが、医師が薬を処方しても、それが正しく使われないと効果は得られません。処方箋にこうした情報が少しでも書かれていれば、薬剤師は患者さんに説明がしやすくなりますし、疑義照会で医師の時間を取ることも少なくなります。医師が薬剤師や患者をもう少し意識して、処方箋を書くことが、よりよい医療につながるのではないかと、取材を通して感じた次第です。

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