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記者の眼

キワモノではなくなった免疫による癌治療

2012/12/21
河野修己=日経バイオテク

 「免疫力でが治療できる」などと書くと、このサイトの読者の中には眉をひそめる方もいるだろう。それも無理はない。インターネット上を検索すれば、あやしげな免疫療法を紹介するサイトが山ほどヒットする。こうした免疫療法のほとんどは高価な自由診療で提供されており、それでも標準的な治療法の無くなった末期癌患者がすがるように治療を受ける場合が少なくない。「有効性を証明する十分なデータもない治療法で金儲けをしている」という批判も未だに根強い。

 しかし、ここ数年、免疫システムを作用機序とする癌の治療技術の有効性が、科学的に確認される例が出始めている。その嚆矢となったのが2010年4月に米国で承認された「Provenge」である。

 Provengeは細胞を有効成分とする医薬品。患者の免疫細胞を採取して体外で活性化させ、それを再び戻すことで抗腫瘍効果を得ようというものだ。512人の前立腺癌患者を対象とした比較試験で、Provengeの投与により被験者の生存期間が延長されることが証明された。2011年3月には抗体医薬「Yervoy」が同じく米国で承認された。Yervoyは、免疫細胞の一種で癌細胞を特異的に攻撃する殺細胞性T細胞の働きを活性化する。メラノーマを対象とした臨床試験で、生存期間の延長が証明されている。

 一方、日本では複数の製薬企業が、癌治療ワクチンと呼ばれる新しいタイプの抗癌剤の実用化に取り組んでいる(表1)。癌細胞の表面には、正常細胞とは異なる蛋白質が突き出ている。免疫細胞はこうした蛋白質(癌抗原)を目印に、癌細胞を攻撃する。人工的に製造した癌抗原(蛋白質そのものや、その一部分であるペプチドの場合もある)を体内に投与すると、免疫細胞の癌攻撃能力が強化される。これが癌治療ワクチンの原理だ。

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