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 少し前の話になるが今年8月、医療計画の策定に関するシンポジウムに参加した。医療計画とは各都道府県の医療提供体制の方向性を示すもので、5年ごとに見直される。かつては医療圏の設定や医療従事者の確保など、医療機関の量的な指標にとどまっていたが、2008年より“4疾病5事業”(癌、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病の4疾病と、救急、災害時、へき地、周産期、小児の5事業)について、各医療機関の役割分担などを具体的に示すことが求められるようになった。

 さらに2013年4月から実施される新たな医療計画では、“4疾病5事業”に加えて、精神疾患と在宅医療についても目指すべき方向が示される。医療計画の策定には学識経験者や医療審議会の意見を聞き、パブリックコメントを求める手順があることを考えると、シンポジウムが開催された8月時点でも、自治体にさほど時間が残されていたわけではない。

 にもかかわらず、そのシンポジウムに参加していた複数の自治体の担当者が「どこから手をつけていいものか」と手をこまぬいている状態だった。もちろん、最終的にはどの自治体も、医療計画の策定が間に合わないことはありえない。だが、土壇場になってから場当たり的に作られたそれが、地域の実情に配慮されたまっとうな医療計画になっているかどうかははなはだ疑問である。

 実は筆者は似たような疑問を、09年に各自治体から地域医療再生計画が発表された際にも感じていた。同計画をチェックしたところ、中身は、“ハコモノ”、ITの導入、奨学金制度と同じようなものばかり(関連記事:2009.12.26「地域医療再生計画の中身をチェック!」)。計画書を読む限りでは、いずれも地域で必要なことは分かるし、それらの施策自体を問題視したいわけではない。ただ、これらの施策が、厚生労働省が医政局長通知で各自治体に「例」として示していたものとそっくりだったことが気になったのだ(参考資料:「地域医療再生計画について」)。どの地域でも同じものが求められており、しかもその内容を事実上、厚労省が決めているような状況なのであれば、医療計画を各都道府県で作る意味は全くない。限られた時間の中でこれからあわてて医療計画を策定する自治体が、厚労省の例文を“コピー”するという同じ轍を、今度もまた踏んでしまうのではないか、と心配になる。

 このような状況を「行政の怠慢」と糾弾するのは簡単だ。だが、パブリックコメントという手段を使えば、私たち一般市民も計画が固まる前に問題点を指摘できる。多くの自治体が年末以降、新たな医療計画についてパブリックコメントを求めていく。年末年始、自分の住む自治体の医療提供体制のあり方について、改めて考えてみてはいかがだろうか。

 ちなみに11月2日に国際医療福祉大教授の高橋泰氏が、日医総研から「地域の医療提供体制現状と将来」というワーキングペーパーを公開した。このペーパーは、各種の公開データを全国の二次医療圏ごとに整理したもので、自治体ごとの2035年の医療・介護の需要予測や、患者の流出入のデータなどがまとめられている。これを使えば、自分の考えが中長期の視点に立っているか、また都道府県全体を見渡した際に自分が住む地域のことだけを考えたバランスの悪いものになっていないかをチェックできる。パブリックコメントの投稿時には、ぜひ参照したい。

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