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記者の眼

潜在看護師は人材不足解消の切り札にならない

 「看護師なら誰でもいいから紹介してもらえない?」と、取材先の訪問看護事業者の担当者に言われたことがある。口調は冗談交じりだったが、目は間違いなく本気だった。

 「看護師が採れない」という悩みは、何も病医院だけの問題ではない。介護事業でも、例えば成長著しい通所介護サービスや介護付き有料老人ホームなどでは、看護職員の配置が必須となっている(注:定員10人以下の通所介護サービスでは配置不要)。厚生労働省が推進する「地域包括ケアシステム」の切り札として2012年度介護保険法改正で新設された「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」や「複合型サービス」は、訪問看護サービスの提供を前提としており、看護師のニーズは高まるばかりだ。

 とはいえ若手の看護師は急性期病院指向が強く、介護事業者にあえて就業しようという人材は少ない。在宅医療のニーズの高まりを受けて、今後需要の伸びが見込まれる訪問看護では若干状況が変わりつつあるようだが、「利用者と1対1で接する」というハードルに尻込みするケースは少なくない。だからこそ冒頭の担当者の方は、「とにかく声をかけまくって、細い糸をつなぐように人材を見つける」のだと言う。

「復職するか、それとも育児を取るか」
 厚労省の調査によると、看護師の資格を持ちながら、看護職員として就業していない「潜在看護師」は約55万人に達する。「平成22年衛生行政報告例(就業医療関係者)結果の概況」によれば、2010年末時点での看護師数は95万2723人(准看護師や保健師は除く)。つまり、就業看護師の6割弱に相当する人材が「資格を眠らせている」わけだ。

 こうした状況から、厚労省や大手病院だけでなく、介護事業者も潜在看護師の発掘に力を入れている。例えば在宅介護事業者最大手の(株)ニチイ学館は、潜在看護師向けに復職を支援する「看護職復帰応援プログラム」を、2010年3月からスタートさせた。看護職を取り巻く状況などの講義とバイタルサイン測定などの実技を組み合わせたもので、これまでに全国100カ所以上で300人強の潜在看護師が参加。このうち約3割が看護師として復職したという。

 こうした取り組みは、意欲のある人材の発掘という意味で、非常に意義があると思う。ただその一方で、潜在看護師は看護師不足の根本的な解消にはならないだろうと感じている。理由は二つある。

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