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記者の眼

ジャーナリストに求められる、医学論文を読み解く力
NIH主催の「Medicine in the Media」に参加して

 先月、1週間の有給休暇を取って、米国立衛生研究所(NIH)が主催する「Medicine in the Media(以下、M in Mと略、URL:http://prevention.nih.gov/medmediacourse/)」に行ってきた。M in Mは健康・医学分野をカバーするジャーナリスト向けに人気のあるセミナーで、今年は50人の定員に対して250人が応募したという。私はというと、講師を務めたダートマス大学医学部教授のスティーブン・ウォロシン氏とリサ・シュワルツ氏の著書を翻訳(『病気の「数字」のウソを見抜く:医者に聞くべき10の質問』、日経BP、2011年)した縁で、オブザーバーとしての参加が認められた。

 米国では日本に比べて、New England Journal of Medicine誌をはじめとする医学雑誌に掲載された論文が、一般紙やテレビで報道されることが多いようだ。また、医療用医薬品の消費者向け直接広告(DTC広告)が認めらており、DTC広告に論文(の一部)が使われることも少なくない。ジャーナリストには、論文、中でも臨床研究の論文を読み解く力が求められている。

 そのためM in Mでも、研究デザインや結果の解釈のしかたをジャーナリストが正しく理解することに力を入れていた。例えば論文に、「食品Aをたくさん食べる群は、少なく食べる群に比べて、病気Bの発症が少なかった」と書かれていたとする。これがランダム化比較試験なら、記事に「AがBを減らす」と書いてもよいかもしれない。しかし、前向きコホート研究なら、「関連がある」とは書けても、因果関係を示す「減らす」という表現は使うべきではない。なぜなら、未知の交絡因子があるかもしれないから――といった具合だ。

 別の講師(HealthNewsReview.orgのゲリー・シュウィツァー氏)は、米国の健康・医学記事を10項目から成る指標を用いて評価する取り組みを続けている。6年間で1800本以上の記事を評価した結果、その7割で、(1)費用の記載、(2)有益性の定量化、(3)有害性の定量化、(4)エビデンスの質の評価――ができていなかったそうだ。

 同氏はさらに、改めるべき点として、(1)代用アウトカム(検査値の改善など)にしか言及しない、(2)効果の大きさを過大評価する(相対リスク減少のみを示す)、(3)予備的な研究から多くを言い過ぎる、(4)利益相反に対する注意不足――などを挙げていた。

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