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 一般の健康診断は心血管疾患や癌の罹病率・死亡率を減らさない──。デンマークにあるノルディック・コクランセンターの研究グループは去る10月17日、こんな主張を掲げたシステマティックレビューをコクランライブラリのウェブサイト「COCHRANE DATABASE OF SYSTEMATIC REVIEWS」に発表した。

 ちょうど私のメールボックスにわが社の人事室から「定期健康診断のご案内」と題するメールが届いた矢先だったこともあり、サイトからそのフルペーパーをダウンロードして読んでみた。

 研究グループはMedline、Embase、コクランライブラリなど様々なデータベースを検索し、一般健診を受けた成人(健診群)と受けていない成人(対照群)を比較したランダム化比較試験(RCT)を抽出。最終的に18万2880人を含む計14件のRCTをメタ解析した。

 その結果、健診群では高血圧や脂質異常症の発見や慢性疾患の自己申告、6年後の新たな病気の発見が増えるとの報告がそれぞれ1件ずつあったが、臨床的なイベントは減らなかった。また、健診は入院の回数や専門医への紹介回数、医師への受診回数、休養回数にも影響を与えなかった。

 著者はこの研究を始めた理由として「健診は幾つかの国のヘルスケアシステムの基本要素となっているが、健康成人まで行われるようになったのは最近の現象。その有効性が十分検証されているとは言い難く、健診が導く過剰な検査や治療が害を与える恐れもある」ことを挙げている。

 わが国でも健康成人に対する健診が広く普及しており、健康増進や疾病予防につながると一般に信じられている。特に労働者に関しては、労働安全衛生法が事業者に健診を実施する義務を、労働者には健診を受ける義務を課している。また労働安全衛生規則により、健康診断は1年以内ごとに1回実施するよう定められ、実施すべき検査項目も規定されている。

 しかしシステマティックレビューとメタ解析という最高ランクのエビデンスは、そのような健診に効果はないというのである。論文の著者らは健診の効果が認められなかった理由として、「多くのプライマリケア医が日常診療で心血管疾患などのハイリスクと考えられる患者などには既にスクリーニング検査を実施していることや、健診を受けないハイリスク患者もいる可能性があること」を挙げる。

 私はこの論文の結果を見て「さもありなん」と思った。周囲で酒好きの人が「健診を受けるので3日前から断酒している」と言うのを聞いたり、腹囲測定が健診項目に加わって随分たつが、いまだにリンゴ体形の人が減っていないのを見ると「健診って意味あるの?」って思っていた。健診で異常を指摘されても、その後の生活改善や治療に結びつかなければ意味がないことは容易に想像がつく。

 実際、医師からも「健診で行われる胸部X線検査で早期の肺癌を見つけることは不可能」「尿蛋白検査で陽性と出ても腎生検を受ける人はほとんどいない」「尿潜血反応の陽性はほとんどが病的意味を持たない」「無症候で低リスクの患者に心電図検査を行ってもアウトカムは改善しない」といった見解を聞いたことがある。

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