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店の外観。駅のそばながら、少し分かりにくい場所にある“隠れ家”だ。

 先日三重県へ行った際、以前新聞報道で見て気になっていた、とあるバーを訪ねた。津駅から徒歩5分の場所にある、駅ビルの陰に隠れた古いビルの1階にあるBar Rosso(サイトはこちら)。“Rosso”とはイタリア語で赤という意味で、名前通り内装に赤が効果的に使われた洒落た雰囲気の店だ。今年2月にオープンしたこの店のオーナーは、三重大医学部2年生の森貴祐氏と3年生の河田信彦氏。すなわち学生が2人で開いた店なのだ。

 学生が開いた店といっても、メニューに掲載されたカクテルだけで72種類。もちろん、あらかじめメーカーが調製した酒ではなく、2人がシェーカーやミキシンググラスを駆使してカクテルを作る。作ってもらったギムレットは、ベースとなるジンにもこだわっており(もちろん、まだまだおいしくはなるのだろうとは思うが)、プロの仕事だった。ほかに、ウィスキーなどもそろう。

 2人が開業を決めたのは昨年初めのこと。医学部の先輩が経営していたバーで、森氏が働いたことが始まりだった。「知らない人同士をつなぐ場」という位置付けが魅力的だったという。ところが昨年6月、経営していた先輩が5年に進級したことを受けて、その店は閉店することになる。実習などが始まると、学業との両立はできないというのがその理由だ。森氏が継ぐという話も出たものの、最終的に、友人同士で店を一から作る道を選んだ。

 資金は2人でそれぞれ100万円ずつ用意。半年間、大阪のバーや家庭教師などのアルバイトを行い、大阪と三重とを週3回、往復したこともあった。問題は資金面だけではない。当初は不動産屋に足を運んでも、「学生だから」と、まともに相手にしてもらえなかった。「地元でビジネスをしている方に応援していただけるようになってから、初めて話を聞いてもらえるようになりました」(森氏)。

 休みは日曜日と祝日のみ。また、2人に会うために来店する客も多いということで、極力2人そろってカウンターに立つ。2人がそろわなかったのは、最近2カ月では1日だけだ。試験中も店を開けながら、手の空いた方が順にカウンター奥の客から見えないスペースで勉強を続けていたという。そこまでして働いても現時点では2人分の人件費は出ていない。それでも、「自分たちの接客によって再度来店してくれる客に対する充実感は、同じ仕事をしていても、アルバイトでは得られない」と森氏は話す。

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