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日病薬顧問弁護士の三輪亮寿氏が日本在宅薬学会学術大会で基調講演
「最高裁判決を踏まえ、薬剤師の臨床行為の適法性を再確認する必要あり」

「明白な違法行為は絶対に回避しつつ、合理的エビデンスを積みながら果敢に挑戦すべき」と語る三輪氏。

 「ネット販売規制の省令無効の最高裁判決が出た今、薬剤師の臨床行為の適法性について、再確認する必要がある。トーンダウンというわけではなく、最悪の事態を考えて、先を見通した上で、自信を持ってやってほしい」。2013年7月14~15日に大阪市で開催された第6回日本在宅薬学会学術大会で、日本病院薬剤師会顧問弁護士の三輪亮寿氏は訴えた。
 
 フィジカルアセスメントを含めた薬剤師の臨床行為は適法である(つまり、医師法第17条「医師でなければ、医業をなしてはならない」に違反していない)という根拠は、10年4月30日の厚生労働省医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」(医政発0430第1号[PDFはこちら])とされる(表1)。加えて、12年度調剤報酬改定で病棟薬剤業務実施加算が新設されたことも、薬剤師の臨床行為の実施を後押しし、追い風が吹いていた。
 
 しかし13年1月11日、最高裁判所で一般用医薬品(OTC薬)ネット販売を規制する省令が無効であるとの判決が下された(関連記事)。法律に基づく省令でさえも違法であり無効との判決だ。適法性根拠として、通知は省令よりも弱い。つまり、医政局長通知の無効を理由に、薬剤師のフィジカルアセスメントの医師法第17条違反が追及される可能性が否定できないというわけだ。「薬剤師の臨床行為の実施について今まで旗を振ってきたが、『待てよ、今こそ脇を固める必要がある』と考えた」(三輪氏)。

 もう一つ、三輪氏が懸念するのは、歯科医師の医師法第17条違反事件(最高裁09年7月26日判決、上告棄却で確定)。これは、歯科医師が歯科に属さない疾病に関わる患者に対し、気管挿管などの手技を行うことは、明らかに医師法第17条に違反するという判決。三輪氏は「この判決は、歯科医師業務の限界を示している。薬剤師業務についても当てはめて考えることができる」と指摘した。

「いきなりバイタル取得は極めて危険」
 これら2つの最高裁判決を踏まえ、三輪氏は、薬剤師が絶対に遵守すべき2つの事項として、個人情報保護法の遵守と、薬学的管理という「目的」を明確にすることを挙げた。

 薬剤師のフィジカルアセスメントは、個人情報の取得行為であり、適正に情報を取得し、管理しなければならない。「しかし、これまで個人情報保護法の観点から議論されていなかった。情報を取得する際の小さなミスも『不適正取得』になる。それがセクハラ、パワハラのクレームにつながり、引いては医師法第17条違反という刑事事件につながる恐れもある」(三輪氏)。

 三輪氏は、トラブル回避のためには薬剤師によるインフォームドコンセントが必須と指摘。具体的には、1)自分が薬剤師である、2)薬剤師のフィジカルアセスメントを、病院も主治医も認めている、3)あなたの薬物治療の最適化のために実施する、4)研修を受け、十分な技能を習得している、5)迅速かつ無侵襲である――ということを、患者に分かりやすい言葉で説明し同意を得ることだ。

 「特に、薬学的管理という目的を明確にしなければならない。説明なく、いきなり5つのバイタル(意識、呼吸、血圧、脈拍、体温)を取得するような行為は、歯科医師の判例から見ても、極めて危険だ」

 三輪氏は、表1に挙げられている9つの業務のうち、1)の業務は「少なくとも現行は“グレーゾーン”と覚悟する必要がある」との考えだ。「“グレーゾーン”だから手を出さないのではなく、覚悟した上でこれに挑戦し、合理的なエビデンス、立法事実を積み上げていくことが大切。たとえ違法問題が生じても、合理的なエビデンスで対抗して、『通知』の内容に沿った正規の立法を待つべきだ」と語り、同時に違法の恐れのない薬学的管理を積極的に臨床の現場で展開することが重要だと強調した。

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