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OTC薬販売時に薬剤師はどう介入すべきか
厚労省ネット販売検討会、情報収集の在り方が再び争点に

5月10日に開催された厚労省検討会(第8回)の様子。

 副作用リスクの高い一般用医薬品(OTC薬)を販売する際は、患者の症状や副作用歴、併用薬といった情報を薬剤師が収集する必要がある。厚生労働省が5月10日に開催した「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」の第8回会合では、そのような情報収集の在り方について、ネット販売反対派と賛成派の間で意見が対立した。反対派は、「個々のケースに対して適切な質問を投げ掛けるには薬剤師の判断が必要であるから、対面で販売すべきだ」と主張したのに対し、賛成派は、「ネット販売でも、ウェブ画面上で必要な質問事項を提示して購入者に回答させることで、薬剤師の介入は可能だ。使用者から対面で情報収集することを義務付けるならば、代理購入を禁止することになる」と反論。議論は平行線をたどった。

厚労省、「条件付きネット販売解禁」報道を否定
 同日の会合ではまず、5月9・10日に全国紙2紙が「厚労省はOTC薬のネット販売を条件付きで解禁する方針を固めた」と報じたことについて、日本薬剤師会副会長の生出泉太郎氏が「報道の内容は事実か」と質問した。それに対して、厚労省事務局は、「報道されたような方針が現時点で固まっているわけではないし、厚労省側から指示していることもない」と回答した。

 続いて、厚労省事務局が「議論を進めるための事務局たたき台(案)」を提示し、説明を行った(資料はこちら)。たたき台は、座長の遠藤久夫氏(学習院大学経済学部教授)が作成を指示したもの。これまでの議論を踏まえて、(I)一般用医薬品の意義、(II)インターネット販売等のニーズ、(III)一般用医薬品のインターネット販売等のルール、(IV)偽造医薬品・偽販売サイトへの対応――を整理した。(III)はさらに、(1)コミュニケーション手段にかかわらずリスク区分ごとに求められる情報提供等の機能の考え方、(2)各コミュニケーション手段の特徴、(3)リスク区分ごとの各コミュニケーション手段の評価や位置付け、(4)安全性確保のための方策、(5)憲法および現行の法体系との関係、(6)健康被害等が生じた際の責任の所在――に分かれており、今回は主に(III)の(1)~(3)について議論された。

販売時の情報収集の在り方が争点
 OTC薬販売時のコミュニケーション手段に求められる機能について、厚労省作成のたたき台では、「医薬品の適正使用のため、専門家が購入者側から必要な情報を収集できること」「専門家と購入者側とのやり取りに双方向性があること」「そのやり取りが同時または遅滞なく適時適切に行われること」「専門家から購入者側に対して受診勧奨が行えること」「販売後も、購入者側からの相談を受け付けることができること」――の5項目を挙げている。販売時に収集すべき情報としては、使用者の基本情報のほか、現病歴や症状、アレルギー歴、併用薬、使用者本人が自覚している薬の効果や副作用、専門家が見たり触れたりすることでのみ確認できる症状の状態、購入者の挙動――などを挙げている。

 これに関して、日薬の生出氏は、「(これらの項目は)対面で行うことが重要。現行の薬事法で購入者からの情報収集が義務付けられていないのは、情報収集が薬剤師として当然のことであり、法律に明記するまでもないからだ」と主張し、「ただし、(情報収集の義務を)明文化するという議論になれば、その必要性は認めざるを得ない」と続けた。慶應義塾大学薬学部教授の福島紀子氏も、「第1類医薬品の中には、医療用医薬品からスイッチしたものも含まれている。これらは薬剤師が関わることで安全性を担保すべきもの」とし、第1類医薬品のうち、スイッチOTC薬として発売されてから安全性について評価が確立されるまでの間は、薬剤師が対面で販売すべきだと主張した。

 これに対し、日本オンラインドラッグ協会理事長の後藤玄利氏は、「(最高裁判決でネット販売を禁止する省令が違憲と判断されている中で)“対面原則”を持ち出すのは間違っている。第1類医薬品の販売時に、厚労省が示す『最大限の情報』を収集しないと副作用リスクが高まるという裏付けはない」と反論。「ネット販売でも、専門家が収集すべき情報をウェブ画面に提示し、購入者にきちんと答えてもらうようにすれば、専門家の介入は可能だ」と訴えた。また、新経済連盟顧問の國重惇史氏は、「OTC薬の販売時に専門家による情報収集を義務付けるかどうかの議論になるが、もし義務付けられるとしたら、(使用者と購入者が異なる)代理購入もだめということになるのではないか」と指摘した。

 後藤氏が、ネットでの第1類医薬品の購入履歴を基に、購入回数が多い患者に対し薬剤師が受診勧奨を行ったケースについて言及すると、日本医師会副会長の中川俊男氏は、「それは受診勧奨のタイミングをとっくに超えている。OTC薬の販売時には、専門家が最大限の情報を収集すべきだし、その際はきめ細かい配慮が必要になってくる」と指摘した。日薬の生出氏は、「責任を持って受診勧奨を行うのは、地域医療における薬剤師の役割。顔の見える関係が必要で、ネット販売では難しい」と付け加えた。

 このほか、全国消費者団体連絡会事務局長の河野康子氏は、「消費者の立場としては、医療機関を受診しないもしくは受診できないという自己判断が正しいかどうか、そこを専門家に担保してもらいたいと思う。ネット販売であればどのように担保できるのかを押さえてほしい」と意見した。この日、3時間にわたって、ネット販売賛成派と反対派の両面から意見が飛び交ったものの、たたき台の具体化は進まず、議論はまたも持ち越しとなった。

「ネットで販売できないほど危険なOTC薬は処方薬に戻すべきだ」
 検討会の終了後、日本オンラインドラッグ協会の後藤氏は記者会見を行い、ネット販売のルールづくりが遅々として進まない現状に対して不満をあらわにした。

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