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特集◎今年こそ!一歩進んだ連携を《5》【医師の立場から】
吸入指導は技量が試される究極の服薬指導
東濃中央クリニック院長 吸入療法アカデミー 代表理事 大林浩幸氏

おおばやし ひろゆき○1990年名古屋大学医学部卒業、医学博士。名城病院、一宮市民病院、名古屋大附属病院、東濃厚生病院アレルギー呼吸器科部長を経て、2011年開業。地域薬剤師会と連携し、的確な吸入指導のできる認定吸入指導薬剤師の養成などを行う「吸入療法アカデミー」を13年に設立し、代表理事に就任。

 私が薬剤師と初めて関わりを持ったのは、地域の基幹病院に呼吸器内科医として勤務していた15年前のことです。当時、院外の保険薬局のことを何も知らなかった私は、薬局薬剤師であれば誰しも吸入指導のことを熟知しており、吸入薬の処方箋を受け取ったら当たり前のように適切な吸入指導を行っているものと思っていました。

 しかし、地域の薬剤師会とのつながりをきっかけに、薬剤師といえども、全ての吸入デバイスに精通した人はほとんどいないこと、薬剤師自身が扱った経験のない吸入デバイスの使い方を、初めて使用する患者に対して指導していることなど、実態が徐々に分かってきました。そこで、地域の薬剤師と勉強会を開くようになったのです。

 勉強会を通して、吸入指導の知識・技術レベルが薬剤師によってまちまちであることを痛感した私は、地域で最低限、同じレベルの指導が担保できるよう、認定吸入指導薬剤師制度をつくりました。岐阜県・東濃地区にある全ての薬局の薬剤師を対象に検定試験を実施し、患者が良質な吸入指導を、どの薬局でも安心して受けられるような体制構築に努めてきました。

 こうした取り組みがやがて他県の薬剤師の目にも留まり、講習会などを依頼されるようになったため、2013年に吸入療法アカデミーを立ち上げました。現在、活動の輪は11県に広がっており、これまでに延べ七百数十人の認定吸入指導薬剤師を輩出しています。

 地域において、共通の技量とノウハウを持った標準化された薬剤師集団が組織されると、患者からの信頼が増すだけでなく、医師との間にも強い信頼関係が生まれます。医薬連携という言葉が使われるようになって久しいですが、ともすると、医師から薬剤師への一方通行の連携に終始しがちです。しかし、薬剤師が技能を磨き、医師との“共通言語”を持つと、薬剤師の意見に医師が耳を傾けるようになり、双方向性のある連携へと変化していくのです。

見て聴いて話すを繰り返す
 よく勘違いされるのですが、吸入指導は、吸入手順を患者に正しく説明することではありません。実際、それだけでは患者さんは吸えるようにはなりませんし、1回の指導で理解できない患者さんもたくさんいます。

 そもそも、吸入手技のピットホール(誤操作)が生じる原因は、個人の癖や加齢に伴う身体・精神機能の衰え状況、性格、生活スタイルなどが素因となり、まさに10人10色。そのため、医師、薬剤師、看護師など多職種が連携して情報収集し、目の前の患者さんがうまく吸えない原因を探り、共有する必要があるのです。そして、ピットホールが明確になれば、それを教えてあげて、“穴”に落ちないようにする、それでも毎回落ちてしまうようなら、吸入デバイスを交換する──といった対応を考えていくわけです。

 これらを実践していくためには、それぞれの職種が、「患者をよく見て、患者の話をよく聴き、そして理解できるようによく話す」を繰り返すことが非常に重要となります。

 このように、吸入薬のアドヒアランスは、薬物とデバイスの両者の視点から捉えなければならない難しさがあります。薬剤師には、薬の専門家であると同時に、デバイスの専門家にもなってほしいと思っています。医師は時間的な制約もあって、患者の全ての情報を確認することは困難です。薬剤師が、薬とデバイスの両方について患者に適切に確認し、得た情報を我々医師にフィードバックしてほしいのです。例えば、関節リウマチで指が曲げられないにもかかわらず、プッシュ式の吸入薬を漫然と処方され続けている患者さんなども、現にいますから。

 医師の立場からみると、薬剤師が行う様々な服薬指導の中で、実は吸入指導が、薬剤師の技量を最も必要とするのではないかと感じます。裏を返せば、吸入指導が正しくできる薬剤師は、他の服薬指導も上手にできるはずです。まさに、薬剤師の腕の見せ所であり、ぜひ技量を磨いてほしいと思います。

 世間では、医師が処方した薬を、数を間違えずに渡すことが薬剤師の役割かのような風潮がいまだにありますが、本来、薬剤師には、薬全般の管理者であることを認識してもらいたいと思います。医師が処方した薬が、目の前の患者さんに本当に合っているのかを吟味できる、そんな薬剤師の専門性に期待をしています。(談)

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