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女性の神経因性膀胱、なぜエブランチルだけ?

2018/02/13

 患者の波が途切れる。積み上がった薬歴に、僕はため息をつき、周囲を見渡す。すっかり日が暮れていた。まだ、17時だというのに。季節が夜の長さを変えているようだ。外の冷たい風を遮っている薬局の大きな窓は、僕の視線を外に逃がすことなく薬局の中に閉じ込める。窓に映るあゆみさんは、広域処方箋を手に何やら調べ物をしているようだった。

 「ケンシロウさん、この泌尿器科の処方なんですけど」。あゆみさんはケンシロウに処方箋を差し出す。50歳女性へのエブランチルカプセル(一般名ウラピジル)とベサコリン散(ベタネコール塩化物)、つまりα1遮断薬とコリン作動薬の併用、これは神経因性膀胱などによくある処方だ。「ベサコリンは分かるんですよ。もう1つのエブランチル、これってなんか特別なんですか? なんでこれは女性にも使えるんですかね?」

 「エブランチルは、神経因性膀胱の適応を持つ日本で唯一のα1遮断薬だからね。女性の排尿障害に使えるんだよ」。ケンシロウはあゆみさんの後ろで腕組みをしながら得意げに応じている。「ちなみに、ベサコリンは膀胱排尿筋の収縮力の低下に対しての処方だよ」

著者プロフィール

山本雄一郎(阪神調剤ホールディンググループ 有限会社アップル薬局[熊本市中央区])
やまもと ゆういちろう氏 1998年熊本大学薬学部卒業。製薬会社でMRとして勤務した後、アップル薬局に入社。2017年4月にアップル薬局が阪神調剤ホールディンググループの一員に。ブログ「薬歴公開byひのくにノ薬局薬剤師。」を執筆中。2017年3月に『薬局で使える実践薬学』(日経BP)を発刊。2017年4月より熊本大学薬学部臨床教授。

連載の紹介

山本雄一郎の「薬局にソクラテスがやってきた」
薬局で患者さんの何気ない言葉にハッとしたり、後輩からの意表を突く質問に筋道立てて説明できなかったりしたこと、ありませんか? そんな臨床現場に転がる疑問の裏には、薬学の根幹を成す真実が隠れていることも。それらの真実を、「薬局薬学のエディター」を志す熱血薬剤師の山本氏がモノローグ調で解き明かします。

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