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肝代謝型、肝排泄型、肝消失型の違いは?

2016/10/06

 「肝代謝型薬剤ってややこしいですよね」。あゆみさんはデスクマットの下に並べている資料を整理しながら独り言のように続ける。「代謝物に活性があるかどうかを確認しないと、腎排泄なのか、肝排泄なのか分からないですからね」

 あゆみさんがデスクマットにセットしたのは、「腎機能低下例に特に注意が必要な経口薬の一覧表」だ。アロプリノール(商品名ザイロリック他)、スルピリド(アビリット、ドグマチール、ミラドール他)、ガバペンチン(ガバペン、レグナイト)、ファモチジン(ガスター他)、バラシクロビル塩酸塩(バルトレックス他)、レボフロキサシン水和物(クラビット他)、メトトレキサート(メソトレキセート、リウマトレックス他)……などなど、よく見る薬剤の名前がずらりと並んでいる。薬局にあるアイテムは、逐一この表を見なくても済むように把握しておいてもらいたいところ。でも、言わんとすることは分かる。

 あゆみさんが言う“肝排泄”とは、“非腎排泄”を意味しているのだろう。ただ、言葉の問題ではあるが、現実には“肝排泄”というものは存在しない。あるのは、肝消失もしくは胆汁排泄だ。また、後者はそれほど多くはない。

 「えっ、肝排泄型薬剤って普通に使うじゃないですか」。当惑気味のあゆみさんはさらに続ける。「でも確かに、わざわざ胆汁排泄型ってうたっている薬もありますね。もしかして、私の理解が足りてません?」

 では、一つずつ確認していこう。まずは薬剤の排泄、そこから復習してみる。

 薬剤は、水溶性と脂溶性に大きく分けられる(図1)。水溶性薬剤の排泄はいたってシンプルで、そのまま腎臓から尿中へと排泄される。ほとんど代謝を受けないものも多い。

 最近のコラムでも扱ったジゴキシン(ジゴシン他)やメトホルミン塩酸塩(メトグルコ他)の尿中未変化体排泄率(fu)は高い。ほとんど代謝を受けずに腎から排泄される。昔はfu≧70%を腎排泄型薬剤とすることが多かったが、そうするとシベンゾリンコハク酸塩(シベノール他)のような、特に注意すべき腎排泄型薬剤を見落としてしまう。そのためだろう。今ではfu≧60%を腎排泄型とすることが多くなったようだ。

著者プロフィール

山本雄一郎(阪神調剤ホールディンググループ 有限会社アップル薬局[熊本市中央区])
やまもと ゆういちろう氏 1998年熊本大学薬学部卒業。製薬会社でMRとして勤務した後、アップル薬局に入社。2017年4月にアップル薬局が阪神調剤ホールディンググループの一員に。ブログ「薬歴公開byひのくにノ薬局薬剤師。」を執筆中。2017年3月に『薬局で使える実践薬学』(日経BP)を発刊。2017年4月より熊本大学薬学部臨床教授。

連載の紹介

山本雄一郎の「薬局にソクラテスがやってきた」
薬局で患者さんの何気ない言葉にハッとしたり、後輩からの意表を突く質問に筋道立てて説明できなかったりしたこと、ありませんか? そんな臨床現場に転がる疑問の裏には、薬学の根幹を成す真実が隠れていることも。それらの真実を、「薬局薬学のエディター」を志す熱血薬剤師の山本氏がモノローグ調で解き明かします。

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