DI Onlineのロゴ画像

薬物トランスポーターが取っつきにくい理由

2016/07/01

 薬局の大きな薄い窓を大粒の雨が打ちつけ、そこから見えているぼやけた景色が一瞬光る。数える間もなく轟音が鳴り響いた。閉店間際の薬局は開店休業状態を維持している。僕はといえば、本気を出した梅雨前線がもたらす気圧の変化のせいか、はたまた雷鳴にも動じないこの男の存在がそうさせるのか、軽い頭痛を覚えていた。

 「トランスポーターって難しいっスよね」。ケンシロウは専門誌から目を離し、やっと顔を上げたかと思うと、雨粒が打ちつける窓をちらりと見やって語を継いだ。「特定の組み合わせは分かってるんですけどね。トランスポーターの記事もこうやって読むようにはしてるんですけど、なんか、添付文書に登場するトランスポーターの種類もいつの間にか増えているわ、聞いたことない名前も出てくるわで、なかなか……」 ケンシロウの言いたいことは分かるような気もするのだが、いかんせん、どこから話せばよいものやら。とりあえず、その分かっている組み合わせから尋ねてみる。

 「理解している組み合わせなら、ネオーラルスタチンこれは前にやりましたからねOATP1B1の基質がスタチンで阻害薬がネオーラル」。得意気に話していたと思いきや、ケンシロウは難しい顔になる。「でも、この雑誌にはOATP2って書いてあるんですよ。間違いッスよね? 添付文書もOATP1B1って書いてあったはず」

 ケンシロウはタブレット端末でクレストール(一般名ロスバスタチンカルシウム)の添付文書を呼び出す(表1)。

著者プロフィール

山本雄一郎(阪神調剤ホールディンググループ 有限会社アップル薬局[熊本市中央区])
やまもと ゆういちろう氏 1998年熊本大学薬学部卒業。製薬会社でMRとして勤務した後、アップル薬局に入社。2017年4月にアップル薬局が阪神調剤ホールディンググループの一員に。ブログ「薬歴公開byひのくにノ薬局薬剤師。」を執筆中。2017年3月に『薬局で使える実践薬学』(日経BP)を発刊。2017年4月より熊本大学薬学部臨床教授。

連載の紹介

山本雄一郎の「薬局にソクラテスがやってきた」
薬局で患者さんの何気ない言葉にハッとしたり、後輩からの意表を突く質問に筋道立てて説明できなかったりしたこと、ありませんか? そんな臨床現場に転がる疑問の裏には、薬学の根幹を成す真実が隠れていることも。それらの真実を、「薬局薬学のエディター」を志す熱血薬剤師の山本氏がモノローグ調で解き明かします。

この記事を読んでいる人におすすめ