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第100回薬剤師国家試験に異議あり!

2015/10/19

 午前最後の患者さんを見送ったあと、薬局の大きな窓から高く澄み渡った青空を眺める。患者さんが少なく、何事もないのは良いことなのだが、そんな時ほど、この薬局という狭い箱から飛び出したくなる。そんな感傷に浸っていると、休憩室から楽しそうな話し声が聞こえてきた。どうやら、かこちゃんが遊びに来ているようだ。

 「こんにちは~。お邪魔してます」と、やっぱりかこちゃんだ。かこちゃんは、あゆみさんの後輩で薬学部6年生。現在、来年の薬剤師国家試験に向けて勉強中だ。時々分からない箇所があると、あゆみさんの空いている時間を狙って薬局に遊びに来ている。

 「ユウさん、ケーキありますよ。かこからの差し入れ。お一人様につき2つどうぞ」と、あゆみさんが僕を手招きする。僕はかこちゃんにお礼を述べて、いただいたイチゴのショートケーキとシュークリームを昼ごはんにすることにした。

 「かこ、国試受かったらウチに入りたいんですって。でも、かこがウチに入ったら、いつもみたいに『かこちゃん』って呼んだらダメなんですよ」。あゆみさんが口元を押さえて続ける。「そういうのって、セクハラとかじゃなくて、オジサンなんだよね。ねーー」と、あゆみさんはかこちゃんと顔を見合わせて笑っている。

 忠告ありがとう。いや、もう十分にオジサンなのだが……、はい、気を付けます。しかし、このままだと居づらい。僕は話題を変えるべく、プラスチックフォークが入った袋を破りながら、かこサンが広げている薬剤師国家試験の過去問をのぞき込んだ。

問334  65歳男性。体重72kg。非弁膜症性心房細動との診断で下記の処方薬を服用していた。数日前から、めまい、ふらつき、冷汗、手の震え、軽度の意識障害にて昨日入院となった。本日病室を訪問した薬剤師は、下記の処方薬を日頃欠かさず服用していたことを付添いの家族から聴取した。また、カルテから入院時検査結果が血清クレアチニン値は2.0mg/dL、BUNは39mg/dL、空腹時血糖は40mg/dLであることを確認した。

シベンゾリンコハク酸塩錠100mg  1回1錠(1日3錠)
ベラパミル塩酸塩錠40mg      1回1錠(1日3錠)
ニコランジル錠5mg        1回1錠(1日3錠)
                 1日3回 朝昼夕食後
ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩カプセル110mg
                    1回1カプセル(1日2カプセル)
ニフェジピン徐放錠10mg(12時間持続) 1回1錠(1日2錠)
                 1日2回 朝夕食後

 担当の薬剤師は、入院時の不快症状と検査値から薬の副作用を疑い、医師に薬剤の変更を提案しようと考えた。該当する薬剤はどれか。1つ選べ。

1 シベンゾリンコハク酸塩錠
2 ベラパミル塩酸塩錠
3 ニコランジル錠
4 ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩カプセル
5 ニフェジピン徐放錠

著者プロフィール

山本雄一郎(阪神調剤ホールディンググループ 有限会社アップル薬局[熊本市中央区])
やまもと ゆういちろう氏 1998年熊本大学薬学部卒業。製薬会社でMRとして勤務した後、アップル薬局に入社。2017年4月にアップル薬局が阪神調剤ホールディンググループの一員に。ブログ「薬歴公開byひのくにノ薬局薬剤師。」を執筆中。2017年3月に『薬局で使える実践薬学』(日経BP)を発刊。2017年4月より熊本大学薬学部臨床教授。

連載の紹介

山本雄一郎の「薬局にソクラテスがやってきた」
薬局で患者さんの何気ない言葉にハッとしたり、後輩からの意表を突く質問に筋道立てて説明できなかったりしたこと、ありませんか? そんな臨床現場に転がる疑問の裏には、薬学の根幹を成す真実が隠れていることも。それらの真実を、「薬局薬学のエディター」を志す熱血薬剤師の山本氏がモノローグ調で解き明かします。

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