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エリキュースの代わりにイグザレルトを使ってもいいですか?

2015/03/11

 「ユウさ~ん!」電話を手にしたケンシロウが休憩室のドアを開ける。例のごとく、ノックはない。「Qちゃん先生からです。S病院からの紹介の新患さんがエリキュースを飲んでいるらしいですけど、まだウチには在庫がないじゃないですか。薬価も高いし。それで気を使ってくれているみたいで、『他のNOACでもいいよ』っておっしゃっています。どうします? せっかくだから甘えちゃいましょうか」

 Qちゃん先生は、隣の病院にバイトに来ている、僕と同級生のドクターだ。そういえば先週、久しぶりに飲みに行った時に、最近薬局の在庫が増えて大変だと愚痴をこぼしたばかりだった。どうやら変な気を使わせてしまったようだ。ところで、エリキュース(一般名アピキサバン)の規格はどっちの方だろう?

 「2.5mg、2錠の分2です。患者さんは75歳の女性って言ってました」。なぜかピースサインをしながら、ケンシロウが得意気に応じる。「ウチにあるNOACなら、イグザレルトの10mg錠の分1ですかね?」

 僕はケンシロウから受話器を受け取る。保留を解除しようとしたが、電話はつながったままのようだ。やれやれ、そういえば送話口あたりを押さえていたな。僕はQちゃんに、エリキュース錠2.5mgはすぐに急配を掛けること、NOACは確たる理由もなく変更しない方が無難だと伝えた。

 「了解。NOACはよう分からんからね。じゃあ、手配よろしく。ちょっと声が疲れてるぞ~」と、Qちゃんにまた気を使わせてしまった。

 「Qちゃん先生、いい先生っすよね」。ケンシロウは僕から受話器を受け取りながら、語を継いだ。「でも、甘えれば良かったんじゃないですか? 同じNOACだし、プラザキサじゃあ、エリキュースの2.5mgに対応できませんけど、イグザレルトの10mgなら1日1回で済むし、ウチも在庫も増えずに済むし」と、ケンシロウはちょっと不満そうだ。

 だが僕は、NOACにクラスエフェクト的な対応はまずいと考えている。

 現在、NOACは4製品が発売されており、当薬局にはプラザキサダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩)とイグザレルトリバーロキサバン)の在庫がある。実はエリキュースも、早晩在庫することになるだろうと思っていた(リクシアナ[エドキサバントシル酸塩水和物]も良い薬だが、いまのところダントツの高薬価なので今回は触れない)。現在、NOACの新規処方獲得数はエリキュースがトップで、実にその半数が2.5mg錠での処方といわれている。

 なぜエリキュース錠2.5mgの処方数が多いのだろうか? これには色々な理由があると思われるが、一つ念頭に置いておいた方がいいことがある。それは、エリキュース錠2.5mgを服用している患者さんは腎機能がかなり悪いかもしれない、ということだ。

 「腎機能ですか! そういえば今回の患者さんも75歳ですし、あり得ますね。患者さん来られたら確認しておきます。そもそもエリキュースって他のNOACより、腎機能低下例に使いやすいんですか?」

 エリキュースの最大の特徴は、その代謝経路にある。CYP3A4による肝消失、腎排泄、これらのメジャーな排泄経路に加え、腸管からも排泄されているのだ(図1)。

著者プロフィール

山本雄一郎(阪神調剤ホールディンググループ 有限会社アップル薬局[熊本市中央区])
やまもと ゆういちろう氏 1998年熊本大学薬学部卒業。製薬会社でMRとして勤務した後、アップル薬局に入社。2017年4月にアップル薬局が阪神調剤ホールディンググループの一員に。ブログ「薬歴公開byひのくにノ薬局薬剤師。」を執筆中。2017年3月に『薬局で使える実践薬学』(日経BP)を発刊。2017年4月より熊本大学薬学部臨床教授。

連載の紹介

山本雄一郎の「薬局にソクラテスがやってきた」
薬局で患者さんの何気ない言葉にハッとしたり、後輩からの意表を突く質問に筋道立てて説明できなかったりしたこと、ありませんか? そんな臨床現場に転がる疑問の裏には、薬学の根幹を成す真実が隠れていることも。それらの真実を、「薬局薬学のエディター」を志す熱血薬剤師の山本氏がモノローグ調で解き明かします。

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