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ニコランジルがただの硝酸薬じゃない理由

2015/02/24

 「硝酸薬の連用による耐性ってよく耳にするじゃないですか? ニコランジルは大丈夫なんですかね?」。手を休めることなく、あゆみさんは質問を続ける。「私の中では、ニコランジルは昼の飲み忘れの代表、っていうイメージなんですけど、耐性の問題とか考えると、飲み忘れがあるくらいがちょうどいいのかもしれないと思って」。

 土曜日の午後、患者もまばらなこの時間、僕とあゆみさんは調剤室に並んで、予製薬作りにいそしんでいた。マラソンや長距離水泳のようにひたすら体を動かしていると、頭の方も勝手に動いてあれこれ考えてしまうことがままあるが、あゆみさんもその傾向があるようだ。

 さて、今日の話題はニコランジル(商品名シグマート他)。これを“硝酸薬”とひとくくりで片付けてしまうのは、ニコランジルに失礼だと思う。僕は調剤室に備え付けているタブレット端末を手にすると、日本循環器学会の『心筋梗塞二次予防に関するガイドライン』(2011年)を呼び出した。ここでもちゃんと、ニコランジルは硝酸薬とは別項目で扱われている。

 「ほんとですね。ちょっと見ていいですか?」あゆみさんはタブレットを受け取ると、ニコランジルの項目を読み上げた。「なになに、『ニコランジルはわが国で開発された、ATP感受性カリウム(KATP)チャネル開口薬である』……。ん? KATPチャネルって最近、耳にしたような」。

 その通り。前回のコラム「SU薬の違いは『心』にある」で登場している。ただし、あちらはKATPチャネル遮断薬だが。

 あゆみさんはさらに続ける。

ニコランジルの主な作用機序として、心筋細胞内のミトコンドリアKATPチャネルの活性化が重要な役割を果たしていると考えられている。ミトコンドリアKATPチャネルは心筋の虚血耐性を亢進する虚血プレコンディショニングの最終作用部位の1つであると考えられており、同チャネルに直接作用するニコランジルは心筋保護効果を発揮あるいは高める。

著者プロフィール

山本雄一郎(阪神調剤ホールディンググループ 有限会社アップル薬局[熊本市中央区])
やまもと ゆういちろう氏 1998年熊本大学薬学部卒業。製薬会社でMRとして勤務した後、アップル薬局に入社。2017年4月にアップル薬局が阪神調剤ホールディンググループの一員に。ブログ「薬歴公開byひのくにノ薬局薬剤師。」を執筆中。2017年3月に『薬局で使える実践薬学』(日経BP)を発刊。2017年4月より熊本大学薬学部臨床教授。

連載の紹介

山本雄一郎の「薬局にソクラテスがやってきた」
薬局で患者さんの何気ない言葉にハッとしたり、後輩からの意表を突く質問に筋道立てて説明できなかったりしたこと、ありませんか? そんな臨床現場に転がる疑問の裏には、薬学の根幹を成す真実が隠れていることも。それらの真実を、「薬局薬学のエディター」を志す熱血薬剤師の山本氏がモノローグ調で解き明かします。

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