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胆汁酸からウルソへの理解を深める

2015/01/16

 「ユウさん、まずいです。私、このお正月にかなり太っちゃいました。体重はナイショです。それで、ネットでダイエット情報を調べていたら、『胆汁酸ダイエット』というのを見付けたんです。で、ウルソを飲めばやせるのかな~って思っちゃいました。だってウルソは胆汁酸ですからね」

 連休明けの昼休み。まだ寝正月の影響が続いている僕は既にバテ気味だというのに、あゆみさんはダイエットの話をしながら、みたらし団子を手にしている。その言動の矛盾に気を取られ、僕はあゆみさんの話の内容を吟味することなく聞いていた。

 「それともう一つ思い出したんですけど、メトグルコの話の時に、メトグルコが消化管のASBTトランスポーターをブロックして、再吸収されなかった胆汁酸がL細胞を刺激して、GLP-1を分泌させるっていう内容があったじゃないですか。ウルソを飲んでいる人でもそういう作用が起こっているのかなって不思議に思って」

 ……と、あゆみさんがここまで話を進めてきたときに、やっと僕はわれに返った。話の内容がめちゃくちゃだ。これらの間違いの出発点はどこにあるのだろうか。結論から言うと、ウルソ(一般名ウルソデオキシコール酸)にダイエット効果は期待できないし、ウルソ自体にはもちろんGLP-1分泌作用はない(そもそもウルソはほとんど吸収されてしまう)。

 「ウルソにはダイエット効果はないんですかぁ」。みたらし団子をいつの間にか平らげたあゆみさんは、不満そうに言葉を継いだ。「胆汁酸ってウルソのことじゃないんですか?」

 この一言で分かった。あゆみさんは胆汁酸を理解していないのだ。それはつまり、ウルソの薬理作用を全く理解していないということにほかならない。なるほど、ウルソを投薬する際に、ウルソの薬理作用について話す機会なんてものは皆無に等しいだろう。「肝庇護薬」という字面でしか理解していないのかもしれない。

 「ウルソの薬理作用ですか? 胆汁の流れを良くして肝臓を守るんですよね」と言いつつ、あゆみさんはスマホで素早く検索し、ウルソの添付文書を確認する。

5.作用機序
ウルソデオキシコール酸は胆汁分泌を促進する作用(利胆作用)により胆汁うっ滞を改善する。また、投与されたウルソデオキシコール酸は肝臓において、細胞障害性の強い疎水性胆汁酸と置き換わり、その相対比率を上昇させ、疎水性胆汁酸の肝細胞障害作用を軽減する(置換効果)。さらに、ウルソデオキシコール酸はサイトカイン・ケモカイン産生抑制作用や肝臓への炎症細胞浸潤抑制作用により肝機能を改善する。そのほか、上記の胆石溶解作用,消化吸収改善作用が知られている。 (ウルソの添付文書より)

著者プロフィール

山本雄一郎(阪神調剤ホールディンググループ 有限会社アップル薬局[熊本市中央区])
やまもと ゆういちろう氏 1998年熊本大学薬学部卒業。製薬会社でMRとして勤務した後、アップル薬局に入社。2017年4月にアップル薬局が阪神調剤ホールディンググループの一員に。ブログ「薬歴公開byひのくにノ薬局薬剤師。」を執筆中。2017年3月に『薬局で使える実践薬学』(日経BP)を発刊。2017年4月より熊本大学薬学部臨床教授。

連載の紹介

山本雄一郎の「薬局にソクラテスがやってきた」
薬局で患者さんの何気ない言葉にハッとしたり、後輩からの意表を突く質問に筋道立てて説明できなかったりしたこと、ありませんか? そんな臨床現場に転がる疑問の裏には、薬学の根幹を成す真実が隠れていることも。それらの真実を、「薬局薬学のエディター」を志す熱血薬剤師の山本氏がモノローグ調で解き明かします。

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