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「ベシケアの開始から1週間で口渇が出現しなければ大丈夫?」

2014/05/20

 昼食を済ませ、コーヒーを入れる。いつから食事は“済ませる”ものになってしまったのだろう。そんなことを考えていると、いつも元気なあゆみさんが休憩室に入ってきた。

 「休憩入りま~す」とごきげんな様子。何か良いことがあったようだ。

 「この間、ステーブラの口渇で困っていたBさん、覚えていますか? その後、ベシケアに変更になって心配していたんですけど、大丈夫でした。やっぱり、合う・合わないってあるんですね」

 Bさんの件はよく覚えている。頻尿のため、過活動膀胱治療薬のステーブラ錠0.1mg(一般名イミダフェナシン)を1回1錠、1日2回で開始したが、すぐに口渇を訴えて電話を掛けてきた80歳の女性だ。その後、ステーブラは中止となり、ベシケア錠5mgコハク酸ソリフェナシン)を1回1錠、1日1回朝食後に変更。まずは1週間、様子を見ようということになっていたはずだ。

 「そうです。そのおばあちゃん。1週間ちゃんと飲んで、口渇は大したことないみたいだし、トイレの回数も少し減ったみたいです。これでひと安心ですね」

 なるほど、それは良かった。ただし、「これでひと安心」は早計かもしれない。Bさんだからというわけではない。薬剤が、薬剤の動態が、前と今では違うからだ。

 詳しく見ていこう。

 まずはステーブラ。反復投与の結果から、定常状態に達する薬剤ではないことがわかる。Ritschel理論からも、投与間隔(12時間)/ 消失半減期(2.9時間)=4.13となり、4以上なのでやはり定常状態にはなり得ない。ということは、この薬は、定常状態に達してから薬効が安定するわけではなく、初回投与時からその効果を発揮するというわけだ。

著者プロフィール

山本雄一郎(阪神調剤ホールディンググループ 有限会社アップル薬局[熊本市中央区])
やまもと ゆういちろう氏 1998年熊本大学薬学部卒業。製薬会社でMRとして勤務した後、アップル薬局に入社。2017年4月にアップル薬局が阪神調剤ホールディンググループの一員に。ブログ「薬歴公開byひのくにノ薬局薬剤師。」を執筆中。2017年3月に『薬局で使える実践薬学』(日経BP)を発刊。2017年4月より熊本大学薬学部臨床教授。

連載の紹介

山本雄一郎の「薬局にソクラテスがやってきた」
薬局で患者さんの何気ない言葉にハッとしたり、後輩からの意表を突く質問に筋道立てて説明できなかったりしたこと、ありませんか? そんな臨床現場に転がる疑問の裏には、薬学の根幹を成す真実が隠れていることも。それらの真実を、「薬局薬学のエディター」を志す熱血薬剤師の山本氏がモノローグ調で解き明かします。

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