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ウブレチドとベサコリンによる「クリーゼ」

2011/09/20

 先日、誤投薬による死亡事故でウブレチド(ジスチグミン臭化物)による「コリン作動性クリーゼ」が話題になりました。コリン作動性クリーゼとはどのような副作用なのか、この機会に、確認しておきたいと思います。また、ジスチグミンと同じ副交感神経亢進薬であり、排尿困難の治療に用いられるベサコリン(ベタネコール塩化物)についても、併せて紹介します。なお、ワゴスチグミンも類薬ですが、処方頻度が低いため今回は触れません。

■コリン作動性クリーゼの特徴
 ジスチグミンでは、2010年3月に添付文書改訂が行われ、排尿困難患者に対する用法・用量の変更と、警告欄の新設などが行われたことは記憶に新しいと思います。しかし、その後で薬剤師になった方など、詳細を十分に把握していないという方もいらっしゃるかと思います。

 ジスチグミンによるコリン作動性クリーゼは、発売から2011年3月までに260例の報告があります。その詳細は、鳥居薬品株式会社のウェブサイトにある各種資料に掲載されています。その情報を引用しながら、コリン作動性クリーゼは、どのような状況でリスクが高いのか、初期症状にはどのようなものがあるのかを紹介していきます。

 データの詳細については、鳥居薬品のウェブサイトから、それぞれの資料をダウンロードしてご覧ください。

◎発症までの期間(「ウブレチド錠5mgご使用時の注意事項2011年度版」より)
 コリン作動性クリーゼが発症するまでの期間は、2週間以内が特に多いとされています。資料でも、コリン作動性クリーゼ症例114例を分析した結果、副作用発症までの期間は2週間以内が38例と最も多かったとしています。ただ1~3年経過している症例が17例、3年超の症例も10例と、長期投与後に発現する例もあります。

◎年齢別の発症状況(「ウブレチド錠5mgご使用時の注意事項2011年度版」より)
 70歳以上の高齢者では、リスクが高いので要注意です。上記の114例中、70歳代が52例と最も多く、次いで80歳代が31例、60歳代が14例と続きます。70歳以上が全体の8割近くを占めています。

◎投与量別の発症状況(「使用上の注意の解説(2010年3月作成)」より)
 重篤なコリン作動性クリーゼを発症した160例のうち、10mg/日の服用者が77例、15mg/日の服用者が44例だったそうです。またコリン作動性クリーゼにより死亡した10例の1日投与量は、すべて10~15mgで、5mg/日投与で死亡に至った例はありません。ちなみに現在、排尿困難での投与量は1日5mgと定められています。
 ただし、非重篤例まで含めると、全261例中70例(26.8%)が5mg以下の投与量ですから、用量が少なくても注意は必要です。


■コリン作動性クリーゼをどう予防するか
 コリン作動性クリーゼでは、下痢、腹痛、嘔吐、唾液分泌の増加が主な初期症状です。前述の鳥居薬品の資料(「ウブレチド錠5mgご使用時の注意事項2011年度版」)では、クリーゼ発現前の初期症状について分析が可能だった70例での症状が紹介されています。このうち、断トツで多いのが下痢の41例(58.6%)、これに腹痛16例(22.9%)、嘔吐15例(21.4%)、唾液分泌過多12例(17.1%)、気道分泌過多11例(15.7%)、食欲不振9例(12.9%)、発汗9例(12.9%)と続きます。
 これらの症状は、コリン作動性クリーゼに至らなくても、頻度の高い副作用です。こうした症状が出た場合の対応について、どのように患者に伝えるか、可能であれば医療機関と相談しておくと良いと思います。添付文書の警告欄には、「コリン作動性クリーゼの初期症状が認められた場合には服用を中止するとともに直ちに医師に連絡し、指示を仰ぐよう注意を与えること」と記載されていますので、基本的には「医師に連絡してください」という指導になろうかと思います。

警告欄には、初期症状として「悪心・嘔吐、腹痛、下痢、唾液分泌過多、気道分泌過多、発汗、徐脈、縮瞳、呼吸困難」と記載されています。

著者プロフィール

笹嶋勝(日本メディカルシステム株式会社〔東京都中央区〕)
ささじま まさる氏。大学病院でDI(医薬品情報管理)業務の責任者として8年間勤務した後、現在は、薬局チェーン「日本メディカルシステム」の学術部門長として勤務。東京薬科大学薬学部客員教授。

連載の紹介

笹嶋勝の「クスリの鉄則」
過去に自ら経験した症例やDI業務の中で収集した膨大な情報を基に、医薬品を安全かつ有効に使うために必ず押さえなければいけないポイントを整理し、後進の指導に活かしてきた笹嶋氏。本コラムでは、そのエッセンスを「クスリの鉄則」として紹介していきます。

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