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高齢者の微熱、実は重篤なケースも

2017/06/21

 今回は、高齢者発熱を取り上げる。

 体温は、視床下部によって調節されているが、細菌やウイルスに感染すると視床下部での体温調節のセットポイントが上がり、深部体温が上昇し発熱が生じる。高齢者で典型的なのは、肺炎などの感染症である。その他、悪性腫瘍や関節リウマチなどの非感染性の発熱も多くみられる。

 体を発熱させるには多くのエネルギーを要するが、加齢に伴い、この「発熱を起こす」機能が純化すると言われている。そのため一般的に、高齢者の平熱は若年者に比べて低く、また、重症感染症に罹患しても、微熱程度にしか発熱しないことがある点に注意が必要である。

発熱患者の問診のポイント

発熱はいつからか
解熱鎮痛薬服用の有無

 発熱の多くは、感冒などウイルス性の感染症によるものである。この場合、咳や鼻水などの症状を除き、発熱自体は7日以内にほぼ軽快する。まずは、発熱がいつから始まったのかを確認する必要があるが、思い出せない場合は、全身倦怠感(だるさ)や食欲不振といった普段とは異なる症状の出現から類推できる。

 なお、高齢者の場合、肩・腰・膝などの関節疾患の併存により、発熱する以前から解熱鎮痛薬を服用していることがしばしばある。その場合、服薬により発熱がマスクされてしまい、微熱として訴えることも多い。肺炎など重篤性が高く直ちに受診すべき病態を呈していても、体温が上昇しない背景として、前述の加齢による生理的変化に加えて、服薬の影響についても留意すべきである。

 特に、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の使用量は高齢者で非常に多い。慢性疼痛などに慢然と長期服用している傾向が強いが、高齢者は若年成人に比べて生理的に腎のクリアランス能力が2~3割低下していると考えるべきである。そのために解熱薬の服用に際しては、用量や薬剤選択また他の方法など患者背景に応じた対処が望まれる。

体温を測る習慣があるか
正常体温は何℃か

 身体にほてりなどの異常を特に感じなければ、体温に疑問を持つことは少ないが、実際に測ってみると1℃程度の個人差が出ることは珍しくない。

 正常体温については個人差が大きく、平熱が35.5℃という人もいれば、37.0℃の人もいる。正常と発熱の明確な定義はなく、目の前の患者から「熱が37.2℃ある」と言われても、その人にとって正常体温なのか発熱の徴候なのかは、それだけで判断できない。基準となるのは、個々人の普段の正常体温である。同じ37.2℃であっても、平熱が37℃の人にとっては誤差範囲であり、反対に、平熱が35.5℃の人にとっては、1.7℃の体温上昇は発熱傾向にあることが否めない。発熱を訴える患者に対しては、正常体温を忘れずに確認したい。

悪寒の有無
咳・鼻水などの有無

 さらに、発熱の程度(体温)だけでなく、随伴症状についても聞き取るべきである。発熱の出現により悪寒(ふるえ)が顕著であれば、感染症の中でも重篤な可能性があり、OTC薬や解熱鎮痛薬で対処しているならば迅速な受診が必要である。

服用薬による発熱の可能性の有無

 また、長期に服用している薬剤によって突然発熱を来す可能性は低いが、新規に処方された薬剤の服用によって発熱症状が出現した場合には、薬剤熱が疑われる。薬剤熱を引き起こす可能性がある主な薬剤を表1に示す。

著者プロフィール

大井一弥(鈴鹿医療科学大学薬学部 病態・治療学分野 臨床薬理学研究室教授)◎おおい・かずや。城西大学薬学部卒。三重大学医学部、四日市社会保険病院薬剤部を経て、2005年4月城西大学薬学部病院薬剤学講座助教授、08年4月鈴鹿医療科学大学薬学部病態・治療学分野臨床薬理学研究室教授、10年4月から薬学科長(2期4年)。14年4月から大学院薬学研究科教授も兼任。日本老年薬学会理事。

連載の紹介

大井一弥の「即解!高齢者薬物治療のピットフォール」
不眠、便秘、慢性痛など高齢患者に多い症状から、薬剤師が見落としがちな薬物治療管理上のピットフォールを、高齢者の薬物治療のエキスパートである大井一弥教授が、分かりやすく解説します。

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