DI Onlineのロゴ画像

「便が出ない」と訴える高齢者にどう対応する?

2017/04/04

 今回は、前回の不眠と同じくらい高齢者で訴えの多い便秘を取り上げる。「便が出にくい/便が出ない」原因と、それに応じた治療について、考えてみよう。

 高齢者は様々な要因で便秘を生じやすい。加齢に伴って、腸内の善玉菌が減るなど腸内環境が変化する他、腸管の蠕動運動も低下することが知られている。栄養分をよく噛んで摂取すると腸管の動きは活発になるが、年を取るにつれ食事摂取量や飲水量は減り、全身の運動量も少なくなる。結果として、腸が刺激されず便秘に陥りやすくなる。排便がスムーズでないと食欲も湧かず、さらなる頑固な便秘を招く悪循環に陥ってしまいがちである。

高齢者の便秘のチェックポイント
 薬局薬剤師は高齢患者から下剤の選択について相談を受けることも多いだろう。その際、どのような点を確認すればいいのだろうか。順に見ていこう。

□ 排便回数
□ 排便量
□ 便の性状

 そもそも、排便回数には個人差があり、1週間に3回~1日3回と幅がある。高齢者の中には、排便が1日1回から2日に1回に減っただけで便秘になったと思い込み、下剤を服用する人がいるが、排便回数の減少に伴う腹部膨満や腹痛、硬便による排便困難などの症状がなければ、排便は2、3日に1回で十分である。自己判断による下剤の服用はなるべく避けるように伝える。

 排便状況を尋ねたとき、「1日3、4回くらい」と答える患者の中には、排便回数は多いものの硬便であり残便感を常に伴っている、つまり便秘のケースもある。軟便ではないかと早合点し、止瀉薬を薦めてしまえば、さらなる便秘の悪化を招いてしまう。排便状況を確認する際には、便の量や性状も忘れずに聞き取りたい。

□ 便秘以外の症状の有無
(腹痛、腹部膨満、嘔気・嘔吐、排尿がない、下肢のしびれや疼痛、腰痛、気分の落ち込みなど)
□ 数ヵ月以上持続する腹痛や腹部の不快感の有無

 便秘の発症には自律神経が深く関与しており、認知症やパーキンソン病などの精神神経系疾患や慢性腎臓病の患者などでは、発症率が高いことが知られる。そのため以前にも増して下剤が効かないような状態を呈した場合には、精神神経系疾患の発症もしくは増悪を考える必要がある。

 また、大腸癌など消化器系疾患や、腰部脊柱管狭窄症などにより馬尾神経が障害され便秘を来す場合もある。これらの疾患により、もともと便が出にくい高齢者が、さらに症状を悪化させ得る他、ストレスも便秘の悪化要因の1つである。

 服用中の医薬品の副作用で腸管の動きが鈍くなる、「麻痺性イレウス」も見逃してはならない。フェノチアジン系抗精神病薬、ブチロフェノン系抗精神病薬、パーキンソン病治療薬、三環系・四環系抗うつ薬、オピオイド受容体作用薬、制酸薬、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂などを服用している患者でみられる場合がある。便秘を訴える患者に対しては、これら薬剤の服用有無をお薬手帳で確認するとともに、腹部膨満、腹痛、嘔気・嘔吐などがみられ、症状が続く場合は、速やかに医療機関の受診を促すべきである。

□ OTC薬の緩下薬の服用有無

 便秘に対しては、OTC薬の緩下薬が多用される傾向がある。背後に前述のような重篤な疾患が隠れている可能性もあるため、OTC薬の服用有無・服用頻度はしっかりと確認したい。

□ 食生活など1日の生活パターン

 単に緩下薬を交付するだけでなく、そもそも排便に対する努力がどこまでどれだけ行われているかについても注視し、患者の1日の生活パターンに介入することも大切である。器質性疾患による便秘でなければ、毎度の食事、規則正しい睡眠が保持された上で、日常的に乳酸菌飲料や整腸剤を摂取し腸内環境を整えたり、食物繊維の多い食事やオリーブオイル、水分摂取を心掛けるなどの食生活の改善点を伝える。また、定期的な運動も重要である。

著者プロフィール

大井一弥(鈴鹿医療科学大学薬学部 病態・治療学分野 臨床薬理学研究室教授)◎おおい・かずや。城西大学薬学部卒。三重大学医学部、四日市社会保険病院薬剤部を経て、2005年4月城西大学薬学部病院薬剤学講座助教授、08年4月鈴鹿医療科学大学薬学部病態・治療学分野臨床薬理学研究室教授、10年4月から薬学科長(2期4年)。14年4月から大学院薬学研究科教授も兼任。日本老年薬学会理事。

連載の紹介

大井一弥の「即解!高齢者薬物治療のピットフォール」
不眠、便秘、慢性痛など高齢患者に多い症状から、薬剤師が見落としがちな薬物治療管理上のピットフォールを、高齢者の薬物治療のエキスパートである大井一弥教授が、分かりやすく解説します。

この記事を読んでいる人におすすめ