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葉酸とそっくり!?メトトレキサート

2017/12/25
宮崎 徹

 地域の勉強会で出会った先生から、「いつも連載見てるよ!」とうれしいお声掛けをいただきました。そして、「メトトレキサート(MTX)の歴史は書かないの?」と質問されました。ステロイドやアスピリンの歴史は以前ご紹介しましたが、MTXについては副作用対策からお話したので(関連記事:第4回「『次回、医師に相談を』は禁忌!」)、今回は少し戻って葉酸とMTXの黎明期について、紹介したいと思います。

葉酸の発見

 関節リウマチ治療薬のMTXは、葉酸代謝拮抗薬と呼ばれます。その葉酸は水溶性ビタミンの1種です。ビタミンB群として今では8種類(ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビオチン)が知られています。

 かつて、ビタミンB群の発見を巡る競争があり、たくさんのビタミンBが提唱されましたが、今では前述の8種類に収まっています。葉酸もそうした競争の中で見いだされ、別名「ビタミンM」とか「ビタミンB9」とも呼ばれました。メチル基(-CH3)やメチレン基(>CH2)ホルミル基(-CHO)など、炭素1原子を含む残基を生体内でやり取りするのが葉酸の機能の本質です。葉酸の働きにより炭素原子が移動し、核酸が合成され細胞分裂が起こるため、葉酸は生物の発生と成長のために不可欠な物質です。

 1930年代に、英国の医師、ルーシー・ウィルスらが、インドで酵母エキスに貧血を予防する物質が含まれていることを見いだしました。1941年にホウレンソウからも同じ物質が分離されFolate(またはFolic Acid)と命名されました。この物質に「葉酸」という和名を付け、国内の臨床栄養の分野に広めたのは、先ごろ105歳で亡くなられた日野原重明医師です。葉酸は、妊娠初期の胎児の脳や脊椎の先天性欠損のリスクを減らすための栄養素としても重要です。葉酸は酵母やレバーのほか、濃緑色野菜、豆類、ナッツ類に多く含まれています。

MTXの発見、リウマチ治療への応用

 関節リウマチ治療薬であるMTXは、葉酸の構造を2カ所変えただけの物質です。葉酸の核酸合成能を阻害するため葉酸代謝拮抗薬と呼ばれます。

 1947 年、アメリカン・サイアナミッド社レダリー研究所で合成されたアミノプテリンが、小児白血病に対して効果を示しました。次いでアミノプテリンの誘導体が作られ、その中から悪性絨毛上皮腫に効果を示すMTXが見出されました(図1)。

著者プロフィール

宮崎徹(厚生連高岡病院[富山県高岡市]薬剤部)◎富山県生まれ。1989年に名城大学薬学部を卒業、同大薬学専攻科に進学。専攻科修了後から病院薬剤師として研さんを積み、99年から厚生連滑川病院、2018年から厚生連高岡病院に勤務。現在は関節リウマチと低栄養の治療に関心を持ち、日々奔走。日本リウマチ財団登録薬剤師、日本静脈経腸栄養学会学術評議員・NST専門療法士。座右の銘はPatient-Oriented。

連載の紹介

宮崎徹の「関節リウマチの話をしませんか」
関節リウマチはこの20年ほどで新薬が多数登場し、その予後は劇的に変わりました。しかし患者の不安が完全に解消されたわけではなく、むしろ服薬指導を担う薬剤師の役割は、より重要になっています。富山の病院でリウマチ治療を18年間見つめてきた宮崎徹氏が、見聞きし、経験してきた治療のあれこれを、病院薬剤師ならではの視点で綴ります。

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