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ゾフルーザの小児への適応について思うこと

2019/02/05

 ここ数週間で、中津でも一気にインフルエンザのお子さんが増えてきました。そんな中、お母さんたちから最近、「1日1回の飲み薬があるって聞いたけど、それは使えないの?」と聞かれることが増えてきました。そうです、新薬のゾフルーザ(一般名バロキサビルマルボキシル)です。

 ゾフルーザは、小児で体重が10kg以上であれば適応となります。体重が10kg以上20kg未満であれば、ゾフルーザ10mgを1錠服用します。10mg錠は直径が約5.0mm、厚さが約2.65mmと小さめなので、お子さんでも飲めそうです。

 ゾフルーザのインタビューフォームによれば、国際共同第3相臨床試験でのインフルエンザの罹患期間(中央値)は、プラセボで80.2時間であったのに対して、ゾフルーザ投与群では53.7時間と、有意に短縮しています(P<0.0001)。ただ、これは12歳以上の患者に行われた試験です。12歳未満の小児を対象とした臨床試験は国内第3相臨床試験で行われていますが、これは非対照、非盲検試験で行われています。つまり、12歳未満の小児への有効性は十分に証明されているとはいえないのです。

 それでは、気になるタミフルオセルタミビルリン酸塩)との比較を見てみましょう。成人および青少年患者を対象とした第3相臨床試験で、ゾフルーザとオセルタミビルの比較が行われています。主要評価項目とされたインフルエンザ罹病期間(中央値)は、ゾフルーザ投与群で53.5時間だったのに対して、オセルタミビル投与群では53.8時間と、オセルタミビルとの非劣勢、すなわち同等性が証明されています。しかし、この試験は、20歳以上65歳未満の患者さんで行われたものであり、小児への有効性や安全性を示したデータではありません。

 さて、ゾフルーザの売りは、ウイルス排出の早期抑制です。投与2日目にはウイルス力価が大きく減少し、陰性化(ウイルス力価に基づくウイルス排出停止)することが報告されています。一方、タミフルでは投与4日目にしてやっと陰性化レベルに到達します。つまり、臨床効果は同等でも、抗ウイルス効果はゾフルーザの方が優れています。6ヵ月以上12歳未満の患者を対象とした第3相臨床試験においても、24時間で陰性化することが確認されています。

 その一方で、最近、問題視されているのが、耐性ウイルスです。オセルタミビルではA/H1N1亜型ウイルスのノイラミニダーゼ(NA)蛋白の275番目のアミノ酸が、ヒスチジンからチロシン(H275Y)に置換することで、オセルタミビルの活性が大きく低下したことは有名です。

 ゾフルーザの耐性ウイルスは、実は第3相臨床試験から注目されていました。同薬のインタビューフォームには、成人および12歳以上の小児を対象とした国際共同第3相臨床試験において、同薬が投与された患者(いずれもA型に感染)で、投与前後に塩基配列解析が可能であった370例中36例、約9.7%に、バロキサビルマルボキシル活性体の結合標的部位であるポリメラーゼ酸性蛋白質領域のI38のアミノ酸変異が認められたと記載されています。

 同様に、12歳未満の小児を対象とした国内第3相臨床試験において、同薬が投与された患者で、投与前後に塩基配列解析が可能であった77例中18例(いずれもA型に感染)に、I38のアミノ酸変異が認められています。アミノ酸変異を認めた割合は、実に23.4%に上ります。I38アミノ酸変異を起こした患者では、投与3日目以降に一過性のウイルス力価の上昇が認められました(図1)。

図1 国際共同第3相臨床試験におけるポリメラーゼ酸性蛋白領域のI38アミノ酸変異有無による、ウイルス力価の推移の違い(平均値±標準偏差)(出典:ゾフルーザのインタビューフォーム)

著者プロフィール

松本康弘(ワタナベ薬局上宮永店〔大分県中津市〕)
まつもと やすひろ氏。1956年生まれ。熊本大学薬学部卒業後、大手製薬企業の研究所勤務を経て、2001年に株式会社ワタナベに転職。最初に配属された店舗で、小児の服薬指導の難しさや面白さに魅せられ、患者指導用のパンフレットの作成などを積極的に行うようになった。小児薬物療法認定薬剤師。

連載の紹介

松本康弘の「極める!小児の服薬指導」
小児科門前の薬局で、小児の服薬指導に日々奮闘する松本氏が、日常業務で感じたことや、子どもに薬を飲んでもらうための工夫の数々を紹介します。明日から使える具体的なノウハウ満載!学会で仕入れた、小児科診療の最新トピックスなども飛び込みで紹介します。

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