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抗てんかん薬服用中に授乳はできる?

2016/01/05

 女性のてんかん患者が直面する1番の問題は妊娠・出産だと思います。薬を飲みながら「赤ちゃんに薬の影響はないだろうか?」と常に心配します。しかし「てんかん治療ガイドライン2010」では、女性患者が抗てんかん薬を服用しながら健康な児を出産することは可能であると述べています。

 てんかん患者が妊娠した場合の服薬の基本原則は、(1)服薬によりハイリスクである全身の強く長い痙攣を極力抑える、(2)必要最小限の薬で管理する――の2点です1)。妊娠前に患者に服薬のリスクとベネフィットを十分説明して、服薬を継続することの必要性を理解してもらうことが重要です。

 一方、出産後の母乳と抗てんかん薬の話はあまりされていません。妊娠中、胎児は胎盤を通して母体と同じ濃度の抗てんかん薬に暴露しています。これに対して、母乳を通して暴露する抗てんかん薬の濃度は胎児の時に比べてはるかに少なくなります。母乳によるメリットを考えると、抗てんかん薬を服用しながらの母乳育児が勧められます。

 では、母乳育児されている乳児は、どの程度の抗てんかん薬を暴露するのでしょうか。それを表す指標に、RID(相対的乳児薬物摂取量:Relative Infant Dose)があります。RIDは母親の投与量に対する乳児の摂取量の割合を示します。計算式は下の通りです。

RID = 乳児の摂取量(mg/kg/day)/母親の投与量(mg/kg/day)×100(%)
※乳児の摂取量=母乳中濃度×哺乳量/体重

 通常は、RIDが10%以下、すなわち母体の投与量の10分の1以下であれば安全とされています。ほとんどの薬剤はRIDが10%以下なので、母乳育児している母親が飲んではいけない薬は多くありません。抗てんかん薬のRID値をまとめてみました(表1)。すると、エトスクシミド(商品名エピレオプチマル、ザロンチン)、フェノバルビタール(フェノバール他)、ゾニサミド(エクセグラン他)、トピラマート(トピナ)、ラモトリギン(ラミクタール)はRID値が10%を超えています。

著者プロフィール

松本康弘(ワタナベ薬局上宮永店〔大分県中津市〕)
まつもと やすひろ氏。1956年生まれ。熊本大学薬学部卒業後、大手製薬企業の研究所勤務を経て、2001年に株式会社ワタナベに転職。最初に配属された店舗で、小児の服薬指導の難しさや面白さに魅せられ、患者指導用のパンフレットの作成などを積極的に行うようになった。小児薬物療法認定薬剤師。

連載の紹介

松本康弘の「極める!小児の服薬指導」
小児科門前の薬局で、小児の服薬指導に日々奮闘する松本氏が、日常業務で感じたことや、子どもに薬を飲んでもらうための工夫の数々を紹介します。明日から使える具体的なノウハウ満載!学会で仕入れた、小児科診療の最新トピックスなども飛び込みで紹介します。

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