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薬はだいたい飲めればいい?
がんばりすぎない服薬指導

2014/04/15

 お薬をお子さんに飲ませる苦労というのは、子育てを経験したことがない薬剤師にはなかなか分からないと思います。かく言う私も、2001年に薬局に勤務するようになるまで、自分の子どもに薬を飲ませたことはありませんでした。

 しかし、同僚の薬剤師さんに聞くと、保育園に連れて行く前に薬を飲ませるのは一苦労だそうです。「機嫌が悪いとそっぽ向くし、他のことをしていれば嫌がって泣き出すし……。仕事が始まる時間を気にしながら、化粧もしなくてはなどと毎日焦っています」。これは仕事をしているお母さんにとってはよくある光景だと思います。

 そんな日常の中、仕事中に「熱が出たので連れて帰ってください」と保育園から電話が入り、午後の仕事を中断して保育園に駆けつけ、その後、小児科を受診するわけです。そして、病院で散々待たされて診察を受け、処方箋をもらって薬局に来ます。

 その薬局で、「お薬、飲めないんですか? 必ず飲ませて下さいね」と言われ反論もできず。家に帰って、飲ませようとしても、熱が出ているせいか、機嫌が悪く泣き叫んで、逃げ回る。そんなことをしていたら夕食の準備もできない……。

 われわれ、小児科の処方箋を受け取る薬剤師は、毎回必死で、何とか飲ませてあげようと思い、「ゼリーに混ぜて」とか、「ジュースに混ぜて」とか、「少量に分けて」とか言います。でもある時ふと、「こういう指導はお母さんを逆に追い詰めているのではないか」と感じ、一生懸命指導していることが逆にお母さんに負荷をかけているのではと危惧するようになりました。

 そう考えた時に、結婚式でよく聞く吉野弘氏の「祝婚歌」の一節を思い出しました。

「正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい」(『祝婚歌』より、一部を引用)

 まじめなお母さんだと、ジュースに溶かした時の残渣も気にします。そんなお母さんに対して服薬指導という正論をかざして、相手を追い詰めしまっているのではないでしょうか?

 そう考えた時に使うのは、「だいたい飲めればいいですよ」という言葉です。

 「頑張って飲んでください」といってもどれくらい飲めればいいかわかりません。悩んでいた時に、たまたまメーカーさんの勉強会でもらったパンフレットに書かれていた図が参考になりました。

 「小児科」という雑誌から引用された図でした。小児科の医師が書いた論文で、服薬の状態を「服薬できた」「大体服薬できた」「あまり服薬できなかった」に分けて、その後の患児の症状の変化を調査していました。予想通り、「服薬できた」子と「あまり服薬できなかった」子では、症状悪化や不変を訴えた割合が有意に後者の方が多くなっていました(図1)。

著者プロフィール

松本康弘(ワタナベ薬局上宮永店〔大分県中津市〕)
まつもと やすひろ氏。1956年生まれ。熊本大学薬学部卒業後、大手製薬企業の研究所勤務を経て、2001年に株式会社ワタナベに転職。最初に配属された店舗で、小児の服薬指導の難しさや面白さに魅せられ、患者指導用のパンフレットの作成などを積極的に行うようになった。小児薬物療法認定薬剤師。

連載の紹介

松本康弘の「極める!小児の服薬指導」
小児科門前の薬局で、小児の服薬指導に日々奮闘する松本氏が、日常業務で感じたことや、子どもに薬を飲んでもらうための工夫の数々を紹介します。明日から使える具体的なノウハウ満載!学会で仕入れた、小児科診療の最新トピックスなども飛び込みで紹介します。

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