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カナダで夢を追いかけて

2021/06/25
佐藤 厚

 「夢」という言葉を使うことさえはばかられる年齢になりましたが、20年来の夢がかなって、2022年の1月から、バンクーバーにあるブリティッシュ・コロンビア大学(University of British Colombia;UBC)のFlex PharmD(Doctor of Pharmacyの略)プログラムで勉強することが決まりました。

 Flex PharmDプログラムは、社会人薬剤師が仕事を続けながらフレキシブルなスケジュールで3年間をかけて学位取得を目指すもので、同様のプログラムはアルバータ大学トロント大学にも設置されています。

 現行のカナダの薬学教育では、最低2年間の必須一般教養課程を経た後、選考を経て、4年制の「Entry to Practice PharmD Program」で勉強し国家試験を受験する流れになりますが、このプログラムは比較的最近導入されたものです。

 PharmDへのカリキュラムの改変以前に大学を卒業した薬剤師が取得した学位は、Bachelor of Science(Pharmacy)(通常、B.Sc. [Pharmacy]と表記)ですが、Flex PharmDプログラムはアップデートが必要な薬剤師がさらに研さんを積み、薬剤師としての幅を広げるためのプログラムです。

 PharmDとは、薬剤師の専門職学位で、多くの国で大学卒業時の学位として授与されるものです。国や大学によっては同学位を「Pharm.D.」という風に、ピリオドをつけて表記することもありますが、カナダではいずれの大学においても「PharmD」と統一して表記しています。また、Doctorという名前が付くものの、通常の博士号(Doctor of Philosophy)としては認められません。

 これまで取得した国際渡航医学会の医療職認定や糖尿病療養指導士の資格同様、PharmDの学位をとっても、私の給料が増えるわけではありません。それにもかかわらず、なぜ今、Flex PharmDプログラムにたどり着いたかいうと、これはひとえに長年の憧れに尽きます。

 私が、東京にある星薬科大学に入学したのは1997年のことになりますが、この頃の日本は医薬分業の進展に合わせて、多くの大学の先生が「北米の薬剤師に追いつけ追い越せ」という話をされていました。単純にこれに刺激された私は、もともと英語が好きで外国に憧れていたことも手伝って、とにかく海外で薬剤師として働きたいと思うようになりました。

 私が大学院修士課程に進んだ2001年には、現在、北里大学で教べんを執られている岩澤真紀子先生が、南カリフォルニア大学でFlex PharmDの学位を取得した際の奮闘記を薬学系雑誌につづられるようになり(関連記事:「アメリカ留学なんて考えられなかった」)、それに続くように、岡山県の錦織淳美先生もフロリダ大学で同学位を取られた経験について書かれていました1)。その頃までに、より強い海外志向を持っていた私は、毎回食い入るようにこれらの記事を読み、感化され、居ても立ってもいられず、迷惑を顧みず錦織先生の職場にアポなしで電話をしたこともありました。

 もっとも大学院では、自分は研究室での実験に向いていないと感じていたので、海外の薬剤師になるという方向性を固め、家にいる時間は1980年代後半に米国で流行した医療ドラマ「ER」のDVDを繰り返し見て、自身を鼓舞していました。

 晴れて2008年にカナダで薬局薬剤師として仕事を始めてから早13年がたち、この間、国際渡航医学医療職認定や糖尿病療養指導士といった専門資格を取得し、また最近2年間は薬局長としてマネジメント業務も行ってきました。

 ただ、どんなに仕事に慣れることはあっても、様々な変化がついて回りますから、これに順応していかなければなりません。今回、志望動機に「薬剤師のエッセンスは、生涯学び続けること」と記したように、対人業務を基本とする薬剤師としての仕事を再確認し、仕事の幅を広げたいという思いがまだまだあります。

 この先3年間は、仕事、勉強、子育てのバランスを取るのが大変になるとは思いますが、なんとか頑張っていきたいと思います。また、薬剤師教育の面で参考になることがあれば、この場で随時シェアしていく予定です。


【参考文献】
1)薬剤学 2017;77:188-91.

(佐藤厚=カナダのブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー郊外で薬局薬剤師として勤務。2014年に国際渡航医学医療職認定[Certificate in Travel Health]を取得し、現在に至るまで薬局内トラベルクリニックを担当。星薬科大学卒業、同大大学院修士課程修了。国際渡航医学会、日本渡航医学会会員)

連載の紹介

まいにち薬剤師
保険薬局や医療機関、大学、研究機関、製薬企業、医薬品卸などで働く薬剤師に、日々の業務や日常生活を通じて感じたこと、考えたことを、つれづれなるままに執筆いただくコーナーです。さまざまな薬剤師に、単回もしくは不定期に登場していただき、薬剤師の視点から話題を提供してもらいます。

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