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イスラエルにとって薬局とは

2019/07/08
平井 美津子

 前回の赤チンの記事で3000を超えるシェアをいただき、ありがとうございました(関連記事:「さよなら、赤チン!」)。身近な話題に英語を織り交ぜた本コラムを2015年に始めて4年、月日がたつのは早いものだと実感しています。

 コラムをスタートした頃から訪日外国人観光客が急増し、これまで出会うことのなかった国の人に対応することがあります。例えばイスラエル。

 たいていの日本人にとってイスラエル(Israel)と聞けば、紛争が多い、遠い国で、幾分ネガティブなイメージを持っているかもしれません。しかし、薬剤師にとっては、イスラエルは身近な国です。というのも、イスラエルには世界最大のジェネリック医薬品メーカーがあるからです。

 イスラエルは、中東に位置し、国土は四国くらいの大きさで、人口は約850万人。ユダヤ人(Jew)のために建国され、4分の3がユダヤ人、4分の1がアラブ人(Arab)とその他です。歴史上、パレスチナ(Palestine)問題という複雑な問題を抱えていて、いつ紛争が起こるか分からないため、国内市場は当てにできないという事情があると言われています。

 しかし、中東のシリコンバレーと言われ、高度な技術力を背景にハイテク・情報通信産業、医薬品・医療機器産業が主要産業となっていて、生き残りをかけてイスラエル独自の技術を開発し、世界に発信し続けています。そのため、イスラエルの公用語はヘブライ語(Hebrew)とアラビア語(Arabic)ですが、多くのイスラエル人は英語が堪能です。

 昨年、縁あってイスラエルから日本に観光に来た60代の夫妻をガイドしました。彼らはユダヤ人ではありませんでしたが、第二次世界大戦中、日本人外交官・杉浦千畝氏が「命のビザ」を発給し、6000人ものユダヤ人を救ったことから、イスラエル人は日本にはとても良い印象を持っています。実際、ガイドしたご夫妻も、噂に聞いていた日本の美しさ、日本人の親切さが本当であったことが、“amazing!”と感激され、日本人として誇りに思いました。

 歩きながら、薬局や薬剤師について聞いてみると、イスラエルではOTC薬、化粧品、日用雑貨などが共存した日本のドラッグストアのようなものはなく、薬剤師は独立したpharmacyで、処方箋薬とOTC薬、つまり医薬品全ての供給を担当しているとのことでした。

 ここで、薬剤師という職業が、イスラエルではユダヤ人とアラブ人の架け橋になっているという2015年のThe Times of Israelの記事を紹介したいと思います。まずその前に、複雑なイスラエルの基礎知識です。

 第二次世界大戦後の1948年、アラブ人が住んでいた「パレスチナ」の中に、ユダヤ人のための国「イスラエル」が建国されました。ここからユダヤ人とアラブ人の戦い(中東戦争)が始まりました。

 長年イスラエルのアラブ人は、イスラエルの労働市場で仕事を見つけるのに大変苦労していました。しかし、1994年イスラエルと隣国ヨルダン(Jordan)の間で平和条約が締結され、イスラエルのアラブ人がヨルダンで薬学を学び、薬剤師の免許を取得できるようになりました。薬剤師となったアラブ人がイスラエルに戻って来た時、イスラエルのpharmacyは、アラブ人薬剤師を受け入れて、彼らのキャリアアップをサポートし、ユダヤ人とアラブ人がお互いを尊重する場としての役割を果たしているそうです。Pharmacyが、民族問題を解決する一助となっているというのは素晴らしいことですね。

連載の紹介

まいにち薬剤師
保険薬局や医療機関、大学、研究機関、製薬企業、医薬品卸などで働く薬剤師に、日々の業務や日常生活を通じて感じたこと、考えたことを、つれづれなるままに執筆いただくコーナーです。さまざまな薬剤師に、単回もしくは不定期に登場していただき、薬剤師の視点から話題を提供してもらいます。このコーナーへの寄稿を希望される方は、お問い合わせフォームから編集部にご連絡ください。

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