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野口英世博士が研究したあの感染症
読書の旅にも渡航医学の知識をフル活用!(2)

2018/12/14
佐藤 厚

 今回も読書の旅を通して、渡航医学に触れてみたいと思います。

 前回の記事で紹介したように、垣根涼介さんの「ワイルド・ソウル(上)」の中では、アマゾンのジャングルでの原始的な生活や、日本人入植者の多くがマラリアに罹患した様子が描かれました。その後、追い打ちをかけるように、主人公の衛藤の運命を変える「決定的な出来事」が起こります。

 衛藤の妻と弟が「妙に熱っぽく、熱っぽさと筋肉の張り」を訴えた後、「驚くべき速さで症状が悪化し、連日40度以上の高熱を発し、食べた芋粥を戻し続け、どす黒い血液の混じった胃液を嘔吐し、全身を襲う絶え間ない痛みにもがき苦しんだ」のです。

 「かつては健康そのものだった衛藤の弟の獅子は不気味な黄土色に染まっていき、妻の鼻孔から鮮血がとどめもなく流れ出て、歯茎も血まみれになっていくその様子は、まるで地獄絵図そのもの」で、衛藤の弟は発病後7日目に、そして妻は9日目に息を引き取りました。

 その原因は黄熱でした。黄熱の病原体はフラビウイルス属のRNAウイルスで、サルおよびヒトを宿主として、蚊(Aedes aegypti)を介して感染します。黄熱は、熱帯アフリカと中南米の国や地域で感染のリスクがあります。

 グローバル化に伴う人の移動より、感染症のリスクマップは毎年のように変化していますが、黄熱は、この1~2年の間に、特にブラジルで多く報告されています。厚生労働省検疫所FORTHによる黄熱の発生状況の報告(2018年3月13日更新)によると、ブラジルでは、2017年7月1日から18年2月28日までに、黄熱の確定患者が723人報告されており、死亡者は237人に上ったとのことです。

 黄熱に感染すると、3~6日の潜伏期を経て、発熱と頭痛が突然出現します。その他にも、悪心・嘔吐、結膜充血、蛋白尿が認められ、軽症の場合は1~3日で回復しますが、発症者のうち15%が重症化すると言われています。重症例では、一旦症状が治まってから24時間以内に再び高熱、黄疸、出血傾向、意識障害が出現し、死に至ることもあり、重症化した場合の死亡率は30~60%と言われています。

 なお、黄熱の名称は、黄疸により皮膚が黄色くなることに由来し、ラテン語の黄色を意味するフラヴァス(flavus)が基になっていますが、英語で「イエロー・フィバー(yellow fever)」、ポルトガル語で「フェブリ・アマレラ(Febre amarela)」と呼ばれます。

黄熱ワクチンの接種が推奨される地域
(出典:Centers for Disease Control and Prevention. CDC Yellow Book 2018: Health Information for International Travel. New York: Oxford University Press; 2017.)

連載の紹介

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