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 カナダに住む私が、なぜわざわざ日本の学会に足を運ぶのか──。今回はこの話題について、書いてみようと思います。

 私が次に参加する学会は、7月21日(土)~22日(日)に愛媛県松山市で開催される、第22回日本渡航医学会学術集会です。

 私はカナダの薬局で、普段から渡航医学に関するアドバイスを提供し、また予防接種を行っています。こうした「トラベルクリニック」のビジネスは、競争が非常に激しくなっていますから、他の薬局に負けないようなクリニックを運営するためにも、学会などに出席して知識を深めていくのは必須です。

 それと同時に、国境を越えて参加する学会は様々なトピックの宝庫で、いろいろな先生方との出会いもあり、これも楽しみの1つです。

 今回の日本渡航医学会学術集会のプログラムを見ていて、特にユニークだと思ったのは、2020年の東京五輪・パラリンピック後の医療のあり方を考えるというものです。シンポジウムのタイトルは「外国人にやさしい病院・診療所の未来像」です。

 近年の訪日外国人の増加に伴い、医療機関における外国人患者の受け入れ体制の整備は、最近の大きな話題の1つですが、さらに未来を包括して、日本における外国人に対する医療のあり方を考えることには、大きな意義がありそうです。

 普段メディアで見掛ける先生の講演を聞けるのも、楽しみです。日経メディカル Onlineの看護師向けサイト「Aナーシング」で、感染症について非常に楽しく、時にはエキセントリックなタイトルの記事を執筆されている忽那賢志先生(国立国際医療研究センター・国際感染症センター)は、「帰国後下痢症(仮)」のセッションで講演される予定です。一人のファンとして楽しみにしています。

 また、「日本渡航医学会の将来構想~関係分野との新たな連携」という学会主導特別企画は、日本の渡航医学の未来像を知るため、どうしても拝聴したい講演です。

 私は常々、日本でも薬局薬剤師が渡航医学に参画できると考えています。また、北米のように、薬剤師が海外渡航者にアドバイスだけでなく、予防接種を行うことには大きな利点があります。

 「予防接種権」を得るためには、(1) EBM、(2)安全性と費用対効果、(3)学会からステークホルダーへの働き掛け──という3点において、分析と努力が欠かせないという内容を、私は昨年11月のグローバルヘルス合同大会のシンポジウムで説明しました。

 すると、早速、大きな追い風が吹きました。昨年12月には、日本渡航医学会理事長の尾内一信先生(川崎医科大学)、副理事長の濱田篤郎先生(東京医科大学)、そして渡航医学会薬剤師部会長でもある櫻井眞理子先生(奈良西部病院)の日本薬剤師会への訪問が実現。ここで、渡航医学への薬剤師参画構想が紹介されました。

 これに続き、今年5月には、日本薬剤師会雑誌(第70巻 第5号 2018年5月1日発行)に「海外渡航者の健康対策〜薬剤師がどのように関与するか」として、先生方の記事が掲載されました。
 
 その最後に記された、「日本国内のトラベルメディスンの発展には、薬剤師の方々の積極的な関与が必要である」というメッセージは、薬局薬剤師への大きな期待にほかなりません。

 この流れは、一見、薬剤師の予防接種権には直接結び付いていないように見えますが、大きなモメンタムであることに間違いなく、今後の動きから目が離せません。

 私は、日本人でありながら、カナダで薬局業務に携わり、渡航医学を実践するというユニークな立場を生かして、昨年のグローバルヘルス合同大会ではシンポジウムで講演させていただきました(関連サイト)。今回の学会でも、薬剤師専門部会で簡単なワークショップの時間をいただきました。ここでは、保険薬局の薬剤師が具体的にどのように渡航医学情報を提供すればよいのかをデモンストレーションします。

連載の紹介

まいにち薬剤師
保険薬局や医療機関、大学、研究機関、製薬企業、医薬品卸などで働く薬剤師に、日々の業務や日常生活を通じて感じたこと、考えたことを、つれづれなるままに執筆いただくコーナーです。さまざまな薬剤師に、単回もしくは不定期に登場していただき、薬剤師の視点から話題を提供してもらいます。このコーナーへの寄稿を希望される方は、お問い合わせフォームから編集部にご連絡ください。

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