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日本の薬が欲しい外国人旅行者たち

2018/02/13
佐藤 厚

 前回は、外国人旅行者が日本へ入国する際の薬の規制についてまとめましたが、今回はその逆バージョンで、訪日外国人が薬を国外へ持ち出す現状についてのお話です。

 国立国際医療研究センター国際診療部に勤務する看護師の堀成美先生によると、「日本滞在中に服用した薬がとても良かったので、母国へ帰国する際に多く持ち帰りたい。帰国後も入手したい」という相談件数が増えているそうです。たまたま日本の医療機関を受診した外国人だけでなく、もともと医療ツーリズム目的で来日し、退院・帰国した外国の富裕層からこのような声が聞かれます。

 「お金は出すから送ってほしい」「友人や家族が取りに行くので、渡してほしい」と要望してくる人もいます。

 その理由には、自国には日本で処方された薬が未承認であるため入手できないというケースだけでなく、自国に同様の薬剤があっても品質を信用していないという、薬に対する信頼性の問題があります。

 昨年の国際渡航医学会の薬剤師専門部会で議論されたテーマに、各国の薬の品質の問題がありました。

 日本をはじめとする先進国では、当たり前のように、製造会社の指示する保存方法に従って、薬局やドラッグストアで薬を保管し販売します。しかし、国によってはこの限りではありません。年間を通して温暖な国の道端で直射日光の下に薬を販売する、冷所保存していたとしても停電が日常茶飯事だったり、そもそも薬局で薬剤師や登録販売者がいないのに販売したり、偽薬を販売したりなど、日本の当たり前は世界の当たり前ではないことがよく分かります。

 こうした話を聞くと、日本の医療の充実度やホスピタリティー、そしてメード・イン・ジャパンの薬の品質の高さを再認識します。

 そして、「どうにか日本の薬を手に入れたい」という願いをかなえたいと思う人は多いのですが、そこには大きな罠が潜んでいることもあります。

 例えば、既に自国へ帰国した人に薬が長期処方されたら、その薬の安全使用を誰がモニターするのでしょうか。長期処方を希望する患者が、自国で日本の薬を転売することで儲けを得ようとしていた場合、それをどのように防止するのか、もしも転売された薬を服用した人に薬害が生じた場合の責任はどこにあるのか──など、様々な問題が浮かび上がってきます。薬を安全に使用することを第1に考えれば、自由診療にすれば解決するわけではないことは明らかです。

 これに関連して、特定の薬を「超」長期処方できるかどうかについても考えてみたいと思います。リフィル制度があるカナダでは、慢性疾患の治療薬や経口避妊薬が1年分まとめて処方されるのは珍しいことではありません。処方箋上の記載が「90日分+3リフィル」とあれば、90日×4=360日分の薬が処方されたことになります。大抵の患者さんは、医師が指定したように一度に90日分購入しますが、例えば海外での長期滞在を予定しているような人は、極端な話、1年分を一度に購入していくことが可能です。

カナダでは、リフィルにより1年分の薬が処方されるのはもちろんのこと、6カ月や1年という超長期処方も時折見られる。

連載の紹介

まいにち薬剤師
保険薬局や医療機関、大学、研究機関、製薬企業、医薬品卸などで働く薬剤師に、日々の業務や日常生活を通じて感じたこと、考えたことを、つれづれなるままに執筆いただくコーナーです。さまざまな薬剤師に、単回もしくは不定期に登場していただき、薬剤師の視点から話題を提供してもらいます。このコーナーへの寄稿を希望される方は、お問い合わせフォームから編集部にご連絡ください。

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