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後発品の価格上昇にいかに対抗するか
米国議会に提出された法案の中身とは

2015/06/26
清水 篤司

 前稿(「米国で後発品価格が高騰、日本にも実は影響が…」)でご紹介した通り、米国における後発医薬品(ジェネリック医薬品)価格の急上昇は、民間の医療費の財源だけでなく、公的な医療扶助制度の財源も圧迫してしまうため、大きな社会問題となっています。

 5月30日付で米国の薬局専門誌『Pharmacy Times』のオンライン版に掲載された“Effort to Curb Rising Generic Drug Costs Reaches Congress”(上昇する後発品のコストに歯止めを掛けようとする努力が議会に届いた)という記事では、公的な医療扶助制度の財源を守るため、5月18日に上院・下院のそれぞれの議会に提示された法案が紹介されています。

 ここでは、その法案をご紹介する前に、New England Journal of Medicine(NEJM)誌に2014年11月13日に掲載された事例(アルベンダゾール)(注1)について触れておきたいと思います。これは、医薬品の価格上昇が公的な医療扶助制度のコストを押し上げることを示す事例です。

 ちなみに、これからご紹介するのは先発医薬品です。ただ、既に製法特許は切れており、後発品メーカーが、この品目の後発品の製造許可を申請することはいつでも可能なので、NEJM誌でも後発品に準ずるものとして扱っていると考えられます。その点を踏まえた上でお読みください。

ウルソデオキシコール酸やジゴキシンとは少し違った価格上昇パターン
 NEJM誌によると、アルベンダゾールは1982年にグラクソ・スミスクラインの前身となる会社が米国外で販売を開始したエキノコックス症(包虫症)の治療薬で、96年に米国食品医薬品局(FDA)から承認されました。

 製法特許が切れて長らく経過しているこの薬ですが、米国には、めったに患者が出ないことと、感染者のほとんどが経済的に不利な状況に置かれた移民や難民であることから、後発品の製造を申請するメーカーはありませんでした。10年末におけるアルベンダゾールの「典型的な1日投与量」の平均卸売価格(AWP)は米国では5.92ドルで、米国外では1ドル以下だったそうです。

 その後も米国におけるアルベンダゾールの製造はグラクソ・スミスクラインにより続けられていたのですが、10年10月に、米国内の販売権のみ、中小企業のAmedra Pharmaceuticals社に売却されました。

 時をほぼ同じくして11年には、TEVA社がアルベンダゾールと治療上代替可能なメベンダゾール(鞭虫症治療薬)の製造を、経営的な理由で中止しました。このような経緯で反トラスト法(米国の独占禁止法)に触れない“合法的な独占ニッチ市場”が生まれ、Amedra Pharmaceuticals社は一方的かつ自由にアルベンダゾールの価格を引き上げられるようになりました。

 そして13年までにアルベンダゾールの「典型的な1日投与量」の平均卸売価格は119.58ドルにまで急上昇したのです。低所得者や障害者などのための公的医療保険制度であるメディケイドのデータによると、08年に10万ドル未満だったアルベンダゾールに掛かる年間支出額(当時の処方箋1枚当たりの平均コストは36.1ドル)が、13年には750万ドル(同241.3ドル)を超えるまで増加したそうです。

連載の紹介

まいにち薬剤師
保険薬局や医療機関、大学、研究機関、製薬企業、医薬品卸などで働く薬剤師に、日々の業務や日常生活を通じて感じたこと、考えたことを、つれづれなるままに執筆いただくコーナーです。さまざまな薬剤師に、単回もしくは不定期に登場していただき、薬剤師の視点から話題を提供してもらいます。このコーナーへの寄稿を希望される方は、お問い合わせフォームから編集部にご連絡ください。

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