DI Onlineのロゴ画像

米国で後発品価格が高騰、日本にも実は影響が…
ウルソデオキシコール酸錠品薄の理由とは

2015/06/05
清水篤司

 ご存知の方も多いと思いますが、米国では処方箋医薬品であっても、その価格は日本のように政府が決めるのではなく医薬品メーカーが決定します。このため、同じ薬局で同じ処方内容の調剤を受けたとしても、数カ月の時間差しかないのに、前回と今回では患者負担額が異なるということが起こり得るのです。今回のコラムでは、米国で報道された実例にも触れながら、この問題について考えてみたいと思います。

 2014年11月12日付のCBS Evening Newsのオンライン版に掲載された“Why some generic drug prices are skyrocketing”という記事に、原発性胆汁性肝硬変を患い、肝臓へのダメージを避けるため「Ursodiol」(一般名ウルソデオキシコール酸)というジェネリック薬(後発医薬品)を使用していた女性患者の薬剤費が、3カ月で約13倍に値上がりしたという話が載っています。

 この女性、3カ月前に調剤を受けた際の薬剤(3カ月分)の支払い額は94.5ドル、今回、同じ調剤で請求されたのは、なんと約13倍の1212.3ドルとのこと。彼女はその時のことについて、「動転し、どうしてよいか分からなかった。恐らく一生の間、今後も毎日Ursodiolを飲み続けなければならない私に、調剤を受けないという選択肢はなかったから……」と述べています。

 これは米国の薬局で実際にあった話です。彼女は夫とともに自分たちで調査し、割引レートでUrsodiolの調剤を受けられるようになったそうですが、それでもその費用は以前の3倍もしたそうです。

 これと同じことが日本の保険薬局で起こったら?――ちょっと想像するだけで、事の大きさを感じると思います。

 また、14年11月13日号のNew England Journal of Medicine(NEJM)誌に掲載された記事(注1)には、後発品の価格高騰の極端な例として、1錠6.3セントだった抗菌薬のドキシサイクリンの価格が、1年間に5000%以上の、3ドル36セントに跳ね上がったという事例が紹介されています。また、ACE阻害薬のカプトプリルも同様に2800%上昇したそうです。

 ではなぜ、このような状況が起きるのでしょうか。

 CBS Evening Newsの記事には、NEJM誌の論文中にある、10年ほどの間に製造メーカーが8社から3社に減った強心薬のジゴキシンが、その間に637%もの価格上昇をみせた例を紹介しつつ、「皆、後発品の価格は安いものだと考えているが、それは競争があってのこと。ひとたびその競争がなくなると、もはや安い後発品というものは存在しなくなり、高価な後発品のみになる」という、論文の共著者であるBrigham and Women's HospitalのDr. Aaron Kesselheimの言葉が添えられていました。

 昨年11月20日に米上院で開かれた公聴会では、全米地域薬剤師協会を代表してペンシルバニア州の薬剤師であるRobert Frankil氏が「後発品の価格高騰が、患者や医療保険の支払い者、地域の薬局薬剤師に困難をもたらしている」とコメントしたそうです。

 ちなみに、ここで「地域の薬局薬剤師が困る」というのは、後発品の価格が短期間に上昇すると、その上昇に保険からの償還額の改定が追い付かず、差損が生じるためです。そして、この状況下でひとり勝ちしていると各方面から思われている医薬品メーカー側からは、3社の経営幹部が証言のために招かれましたが、出席者は無く、共和党のCummings氏(米下院監視・政府改革委員会の幹部メンバー)が、「製薬会社幹部は、価格を引き上げた後発品から得られた収益は製品の改良や新薬の開発に100%再投資しており、このような言われ無きクレームを擁護するような資料を提出するつもりはないし、証言者を送り出すこともしないと主張している」とコメントしたのみ(注2)でした。

 この公聴会の様子からも、医薬品の価格決定権が製薬会社側にある以上、この問題が議会で取り上げられたとしても、すぐには解決できないのだろうと推察できます。

連載の紹介

まいにち薬剤師
保険薬局や医療機関、大学、研究機関、製薬企業、医薬品卸などで働く薬剤師に、日々の業務や日常生活を通じて感じたこと、考えたことを、つれづれなるままに執筆いただくコーナーです。さまざまな薬剤師に、単回もしくは不定期に登場していただき、薬剤師の視点から話題を提供してもらいます。このコーナーへの寄稿を希望される方は、お問い合わせフォームから編集部にご連絡ください。

この記事を読んでいる人におすすめ