
現在、麻酔科医の不足が全国的に問題となっており、倉敷中央病院でも麻酔科医の負担を減らすタスクシフティングとして、薬剤師が様々な業務を手術室の中で行っています。
その中で、患者が手術を伴う入院をする場合に、手術を受ける前に必要な患者情報の収集、アセスメント、口腔管理などを入院前に行うPerioperative management team(以下、PMT)と呼ばれるチームがあります。倉敷中央病院ではPMTは2012年から活動を始めました。構成している職種は医師、歯科医師、看護師、医療ソーシャルワーカー(MSW)、栄養士など多岐にわたり、発足当初から薬剤師もその一員です。
PMTの中で薬剤師が担う役割は、現在服用している薬剤の把握と、術前までにおける服薬継続の可否の判断です。実際に、患者さんが手術を行う直前になって、中止すべき薬剤を服用し続けていたことが発覚して、手術が中止になった事例もあります。その場合は、患者さんにはいったん退院していただき、手術の予約を取り直して、再入院となります。これは患者さんにとっても病院にとっても大きな負担となります。
例えば大腸癌の手術目的で入院するために、自身の勤める会社と交渉し、何とか1カ月の長期休暇を取得し入院してきたところ、手術直前になってピルを服用していたことが発覚して手術が延期になってしまった女性の患者さんもいます。また遠方より手術のために飛行機で来院し、家族、親戚も総出で付き添いに来ていた患者さんでは、自分で一包化していた薬を抜いた際に、中止すべき薬を間違えてしまって手術延期になったこともありました。
そういった事例を防止するために、薬剤師が手術の予定が決まった患者さんに対して、あらかじめ外来で現在服用している薬を聞き出し、その中に手術前に服用を中止しなければならない薬が含まれていないかを確認します。そして中止しなければならない薬を患者さんに伝え、実際に患者さんが決められた日から服薬を中止できるように工夫します。
以前に紹介したお薬手帳アプリも工夫の1つです(こちら)。患者さんにリアルタイムで術前中止薬のリマインドを行うことができます。
では、実際に当院での術前中止薬と、その中止理由を以下の表に示します。