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ディズニーランドに学ぶ「Narrative Based Medicine」

2011/10/07

 先月半ば、薬剤師のコミュニケーション論でおなじみの帝京平成大准教授・井手口直子先生の講演会に行ってきました。私のブログにも書いたのですが、「Narrative Based Medicine(NBM)」の話題が最も印象に残っています。

 NBMは文字通り、「患者の“語り”に基づいた医療」という概念です。井手口先生のご講演を聞いて、NBMとは「対話の中から、患者さんの新しい物語を作ること」とか、「EBM(Evidence Based Medicine)を補完する位置付けである」とか、漠然と理解したつもりでした。でも、実は完全に消化しきれていなかったようで、「NBMって、どう業務に反映させたらいいんだろう?」と、もやもやした気分を心の隅に抱えていたのです。

 そんな日々を過ごしていた中、つい最近、自分なりの答えをようやく見つけました。キーワードは「ディズニーランド」です。

 …と、いきなりディズニーランドが登場して、戸惑われた読者の方も多いかもしれません(苦笑)。実は私、薬学部に入学する前に在籍していた経済学部の卒業論文のテーマが、東京ディズニーランドに関するものだったのです。卒業論文を書いたのはもう15年以上前の話ですが、わずかな記憶の糸を手繰りつつ、私なりのNBMの解釈をまとめてみたいと思います。

対話の中から、患者が抱える物語を紐解く
 当時、ディズニーランドは他の遊園地と大きく異なっていた点があります。どんなところか、お分かりでしょうか。「お弁当の持ち込みができない」とか「お酒を出さない」といった決まりももちろんですが、一番大きな違いは、やはりアトラクションの内容や設備です。

 ジェットコースターを例に話を進めましょう。幼い頃の記憶を思い出してみてください。多くの遊園地では、ジェットコースターは身長よりちょっと高い鉄の柵に囲まれた中にありました。脇に設置された券売機で500円くらいの切符を買い、柵に沿って並んで行くと、不機嫌そうな顔をした係員によって、到着したジェットコースターに詰め込まれます。時に家族は引き離され、別々に乗車することもしばしば。1周して戻ってきたら、ちょっと錆びかけた急な階段を降りて終了です。

 一方、ディズニーランドはどうでしょうか。皆さんご存じのように、「ジェットコースター」自体はありません。しかし、「ジェットコースターに乗るアトラクション」、例えば「ビッグサンダー・マウンテン」がありますね。

 一般的な遊園地と何が違うかといえば、まずその「設定」の部分です。東京ディズニーランドのホームページには、ビッグサンダー・マウンテンについて次のような説明があります。

開拓者たちが一獲千金を夢見た、ゴールドラッシュ時代。あれから数十年、廃坑寸前の岩山では、不思議なことが起こっています。機関士のいない鉱山列車が猛スピードで暴走しているというのです…。あなたはこの列車に乗る勇気がありますか?

著者プロフィール

熊谷信(薬剤師・ブロガー)
くまがい しん氏 信州大学経済学部を卒業後、自動車ディーラーの職に就くが、「自分で薬局を開きたい」との思いから、社会人入試を経て東邦大学薬学部へ入学。卒業後、くまがい薬局を開局したが、3年4カ月で廃業し、勤務薬剤師に。2014年4月、長野県諏訪市にららくま薬局を開局。

連載の紹介

熊谷信の「薬剤師的にどうでしょう」
ららくま薬局(長野県諏訪市)を開設し患者と向き合っている熊谷氏が、日々の業務やニュースから感じ取ったことを現場目線で書きつづります。本人のブログ「薬局のオモテとウラ」も好評連載中です。

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