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TBS「がっちりアカデミー」、“薬情拒否で90円おトク”の波紋

2010/04/21

 4月16日にTBS系列で放送された「がっちりアカデミー2時間SP」。この番組は、「物事のソントクについて専門家が紹介する情報バラエティー」とのことですが、16日の放送ではテーマの一つに「病院のソントク」が取り上げられました。

 その中で言われていたのが、「薬局で薬の説明書を毎回もらっていたら90円の損」というもの。番組のホームページ(こちら)にも載っていますが、「薬剤情報提供文書(薬情)」を毎回もらうと、90円の損だというのです。恐らくこれは、「薬剤服用歴管理指導料」(30点)の算定を拒否すれば、300円の3割負担で90円安くなるということを言いたかったのでしょう。

 これを見ると、薬剤服用歴管理指導料は「薬情を渡すためだけの料金」だと捉えられかねません。けれども、この指導料は本来、「薬歴を用いて患者の薬物治療の正当性や安全性をチェックする」ためのものです。患者さんの薬歴を見ながら薬の効果や副作用をチェックしたり、ほかの薬と相互作用を及ぼすものはないかを調べたりする分の評価も含まれています。単純に「薬情を拒否したら90円安くなる」というのはとても乱暴な話です。

 調剤報酬改定が実施され、今月から「調剤明細書」の発行が義務化されました。サービスの内容を患者さんが明確に知ることができるという意味では良い制度なのですが、先のTBSの番組のように、単に金額面のみから「ソンかトクか?」といった観点で医療を受ける人が増えたらと考えると、非常に怖くなりました。

 話は少し変わりますが、この番組のオンエアから10日前のこと。私のブログ「薬局のオモテとウラ」に一人の患者さんが、「薬剤服用歴管理指導料は払わなければいけないものなのでしょうか?」という書き込みをしました。

 それをきっかけとして、患者さんや薬剤師から「薬剤服用歴管理指導料」をめぐるさまざまな意見がブログ上に寄せられました。その中にあったのが、ある薬剤師による「『薬歴を書くな』という患者には調剤拒否をせざるを得ない」という意見です。

 では、薬剤師は「薬剤服用歴管理指導料を算定しないでほしいと申し出た患者に調剤拒否をする」ことができるのでしょうか。「がっちりアカデミー」の一件もあったことですし、考えてみました。

 まず、薬剤師法第21条を引用します。

薬剤師法
(調剤の求めに応ずる義務)

第21条 調剤に従事する薬剤師は、調剤の求めがあった場合には、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。

著者プロフィール

熊谷信(薬剤師・ブロガー)
くまがい しん氏 信州大学経済学部を卒業後、自動車ディーラーの職に就くが、「自分で薬局を開きたい」との思いから、社会人入試を経て東邦大学薬学部へ入学。卒業後、くまがい薬局を開局したが、3年4カ月で廃業し、勤務薬剤師に。2014年4月、長野県諏訪市にららくま薬局を開局。

連載の紹介

熊谷信の「薬剤師的にどうでしょう」
ららくま薬局(長野県諏訪市)を開設し患者と向き合っている熊谷氏が、日々の業務やニュースから感じ取ったことを現場目線で書きつづります。本人のブログ「薬局のオモテとウラ」も好評連載中です。

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