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咽喉頭異常感症(喉の違和感)に効く漢方(1)
咽喉頭異常感症(喉の違和感)の考え方と漢方処方

2022/03/31
幸井 俊高=薬石花房幸福薬局(東京都千代田区)代表、薬剤師、中医師

 咽喉頭異常感症は、咽喉部における異物感など、喉に違和感が生じる疾患です。ヒステリー球、あるいは食道神経症とも呼ばれています。漢方では、喉に梅干しの種が引っかかって飲み込もうとしても飲み込めないような感覚から「梅核気(ばいかくき)」と呼ばれたり、炙った肉片が喉にくっついているような感覚から「咽中炙臠(いんちゅうしゃれん・いんちゅうしゃらん)」と呼ばれたりします。

 よく見られる症状には、喉の異物感の他、つかえ感、何か引っかかっている感じがとれない、食べたものを飲み込みにくい、喉の締め付け感、喉に何かできている感じがする、喉の渇きや乾燥感、胸のつかえ感、吐き気、めまい、動悸などがあります。

 原因としては、逆流性食道炎による胃酸の逆流、あるいは咽喉部の乾燥、後鼻漏、咽喉頭の炎症、甲状腺の疾患、粘痰、悪性腫瘍などがあります。しかし実際には検査をしても原因が見つからない場合が多く、精神的な要因やストレスが関係しているケースが少なくありません。

 喉の違和感の治療法には、原因疾患を治療する方法や、体質から根本原因を改善していく方法があります。西洋医学では、胃酸の逆流に対しては対症療法的に胃酸分泌抑制薬を用いるなど、原因となる疾患の治療が行われます。原因が特定できない場合は抗不安薬、抗うつ薬などが用いられることもあります。

 漢方では、喉の違和感の根本的な原因となっている体質的な要因を改善することにより、根治を図ります。喉の違和感と関係が深いのは、五臓六腑の「胃」と「肺」です。胃は六腑の1つで、五臓の脾と共に飲食物の消化吸収をつかさどり、食べたもののうち人体に有用なものを吸収し(昇清)、残りのかすを下に降ろします(降濁)。また、肺は五臓の1つで、呼吸により空気中から必要な成分(酸素など)を吸入し、体内の不要物(二酸化炭素など)を排出します。

 これら臓腑の胃や肺において、気の流れが停滞したり潤いが失われたりすると、喉に違和感が生じます。従って漢方では、臓腑の胃や肺の機能を安定させることにより、咽喉頭異常感症の根本的な治療を進めます。

 吐き気など、胃から上がってくるような症状が見られるようなら、「胃気上逆(いきじょうぎゃく)」証です。胃の降濁機能が失調した証です。胃気逆(いきぎゃく)証ともいいます。胃内の痰飲が胃から上逆し、喉の違和感や、吐き気が生じます。胃気を降逆して痰飲を除去する漢方薬で、咽喉頭異常感症を治します。

 喉の渇きや乾燥感を伴うようなら、「胃陰虚(いいんきょ)」証が考えられます。胃の陰液(胃陰)が不足している体質であり、それによりこれらの症状が生じます。胃の陰液を補う漢方薬で、咽喉頭異常感症を治していきます。

 喉の締め付け感や咳を伴う場合は、「肺気逆(はいきぎゃく)」証です。肺から気や痰飲が上逆し、上気道に鬱滞し、上気道が狭まり、症状が生じます。肺気を正常に降逆させて上気道に鬱滞する気や痰飲を除去する漢方薬で、咽喉頭異常感症を治療します。

 痰がからんでなかなか切れないような感じなら、「肺陰虚(はいいんきょ)」証です。五臓の肺の陰液(肺陰)が不足している体質です。呼吸器系の粘膜の潤いが不足している状態です。咽喉頭の乾燥により、喉の違和感が生じます。漢方薬で肺の陰液を補い、咽喉頭異常感症を治します。

 精神的ストレスの影響が大きいと考えられる場合は、「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証がよく見られます。体の諸機能を調節し、情緒を安定させる働き(疏泄:そせつ)を持つ臓腑である五臓の肝の機能(肝気)がスムーズに働いていない体質です。肝は自律神経系と関係が深い臓腑です。一般に、精神的なストレスや緊張の持続などにより、この証になります。自律神経系が乱れ、咽喉頭異常感症が生じます。漢方薬で肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにして治していきます。

 喉に水分か何かが上がってきているような感覚が強いなら、「痰濁上擾(たんだくじょうじょう)」証です。痰飲が体の上部に上擾(じょうじょう:上昇してかき乱す)し、咽喉部に停滞することにより、喉に違和感が発生します。痰飲とは、津液が水分代謝の失調などにより異常な水液と化した病理産物です。痰飲を下降させて除去する漢方薬で、咽喉頭異常感症を治療します。

 日常生活では、胃酸の逆流が考えられる場合は暴飲暴食を控え、姿勢を正して腹腔内の内臓への圧迫を和らげるよう心がけましょう。規則正しい生活や、散歩などの適度な運動、深呼吸、十分な睡眠、禁煙、リラックスで自律神経のバランスを安定させましょう。

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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