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気管支炎に効く漢方(1)
気管支炎の考え方と漢方処方

2021/04/07

 気管支炎は、気管支に炎症が生じ、咳や痰などの症状を引き起こす疾患です。短期間で治る急性気管支炎と、長期にわたり症状が長引く慢性気管支炎とがあります。喫煙や受動喫煙により、症状が悪化したり慢性化したりします。

 急性気管支炎の多くは、インフルエンザなどのウイルスや細菌、マイコプラズマによる感染症などが原因で起こります。慢性気管支炎は、抗酸菌や緑膿菌などによる感染症や、喫煙、受動喫煙、大気汚染などが原因で起こります。

 よく見られる症状には、咳嗽、痰、発熱、喘鳴、息切れ、呼吸困難、全身倦怠感などがあります。喉の痛みや、鼻水、チアノーゼ症状などが生じることもあります。長期化して気管支喘息や肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などに移行する場合もあります。

 西洋医学では、鎮咳薬や去痰薬などによる対症療法を中心に治療が行われます。病原菌の関与がある場合は抗菌薬が用いられます。症状が重い場合は、気管支拡張薬が使われる場合もあります。

 漢方では、気管支炎を五臓の肺や痰飲と関係が深い疾患と捉えています。五臓の肺の主な機能(肺気)は、呼吸により空気中から必要な成分(酸素など)を吸入し、体内の不要物(二酸化炭素など)を排出することです。これを「肺は気をつかさどる」といいます。肺を滋潤し、栄養を与える陰液を肺陰と呼びます。肺陰は、肺や気道や体表の分泌液や組織液と強い関係にあります。

 また痰飲とは、津液が水分代謝の失調などにより異常な水液と化した病理産物です。痰飲が咳嗽や痰となって表れると、気管支炎になります。

 漢方では、五臓の肺の機能を調えたり、痰飲を除去したりして、気管支炎を治療します。

 咳嗽のほかに、黄色く粘稠な痰が出るようなら、「肺熱(はいねつ)」証です。五臓の肺に熱邪が侵入するとこの証になり、炎症を起こし、気管支炎になります。口渇、胸の熱感、鼻づまり、後鼻漏も見られます。肺熱を除去する漢方薬で炎症を冷まし、気管支炎を治療します。

 激しい咳嗽と、喀痰しやすい薄い痰が見られるようなら、「寒痰(かんたん)」証です。寒痰は、痰飲が寒邪と結び付いたものです。喘息のようにゼイゼイ喉元で音が鳴ることや(喘鳴)、息切れが生じる場合もあります。くしゃみ、呼吸困難、後鼻漏、冷え症などを伴うこともあります。漢方薬で寒痰を除去し、気管支炎を治療します。

 咳を繰り返し、痰の量が多いようなら、「痰飲(たんいん)」証です。痰飲は、体液代謝の失調や低下、炎症、循環障害、ホルモン異常、代謝産物の体内蓄積、暴飲暴食、食事の不摂生、運動不足などによって生じます。痰飲を取り除く漢方薬を用い、気管支炎の治療に当たります。

 自律神経の失調や更年期障害と関与していそうな場合は、「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証が多く見られます。体の諸機能を調節し、情緒を安定させる働き(疏泄:そせつ)を持つ五臓の肝の機能(肝気)がスムーズに働いていない体質です。肝は自律神経系と関係が深い臓腑です。自律神経の失調が気管支に及ぶと、気管支炎になります。漢方薬で肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにし、気管支炎を治していきます。

 乾燥した咳嗽が出て、咳き込むことが多く、痰が絡んでなかなか切れないようなら、「肺陰虚(はいいんきょ)」証です。五臓の肺の陰液(肺陰)が不足している体質です。陰液とは、人体の構成成分のうち、血・津液・精を指します。慢性疾患や炎症による津液の消耗などにより、この証になります。血痰、喉の乾燥、口渇などの症状が見られます。時に、吐きそうになるくらいの咳き込みや、嗄声(声枯れ)が生じる場合もあります。陰液の不足により相対的に熱が余って熱邪(虚熱)となり、炎症を生じます。漢方薬で肺の陰液を補い、気管支炎を治します。

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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