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関節リウマチに効く漢方(1)
関節リウマチの考え方と漢方処方

2020/01/08

 関節リウマチは膠原病の一種で、免疫機能が異常を来して関節が炎症を起こし、腫れて痛む疾患です。特に30〜50代の女性に多く発症します。

 膠原病は、皮膚や関節、筋肉、内臓などに広く分布する結合組織に炎症や変性が起こる慢性疾患であり、関節リウマチの他に、全身性エリテマトーデス、強皮症などがあります。

 関節リウマチは自己免疫疾患だと考えられています。免疫は、外から体内に入ってこようとする異物を排除して体を守る仕組みです。本来、自分自身の構成成分には反応しませんが、何らかの原因によってこの仕組みが失調すると、自分自身の細胞や組織を異物と認識して、攻撃するようになります。その結果、炎症が生じます。

 関節リウマチの場合は、関節を構成する組織の1つである滑膜が自己免疫の標的となり、異常増殖することで関節内に炎症を起こします。関節の痛み、腫れ、こわばりなどが生じ、悪化すると軟骨や骨が破壊され、関節が変形します。特徴として、関節を動かさなくても痛みが生じる点や、手や足の関節で起こりやすいこと、左右対称に症状が生じやすいことなどが挙げられます。かつては、こうした症状が全身に広がって寝たきりになることもありましたが、今では治療薬が進歩し、早期治療により進行を抑えることが可能になってきています。

 西洋医学では、抗リウマチ薬や非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)、ステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤などを用いて、生活に支障がないように症状をコントロールします。

 漢方では関節リウマチを、風寒湿邪や熱邪が経絡(気・血・津液が運行する通路)を侵した病態と捉えています。風寒湿邪とは風邪、寒邪、湿邪のことです。これらの病邪を漢方薬で除去することにより、関節リウマチの治療にあたります。

 風邪寒邪湿邪熱邪は、いずれも病因(病気の原因)の一種です。それぞれ自然界の風、寒冷、潮湿、火熱により生じる現象に似た症候を引き起こす病邪です。

 経絡は、人体の基本的構成成分である気・血・津液が運行する通路です。全身に分布して人体を1つの有機体として結び付け、生命活動を機能させます。私たちは、経絡の流れが潤滑だと健康ですが、流れが滞ると体調を崩します。

 関節や筋肉にしびれや痛み、運動障害などが生じる証を、中医学で痺証(ひしょう)と呼びます。痺証は、経絡が風寒湿邪などの病邪によって塞がれて閉じ、気血の流れが妨げられ、筋肉や関節の疼痛やしびれが表れる証です。基本的に気血が不足して経絡が空虚になっているときに生じやすくなります。関節リウマチは、痺証を引き起こす疾患の1つです。

 痛みが、あちらこちらと移動しやすい場合(遊走性)は、「行痺(こうひ)」証です。風邪による痺証です。風邪が経絡を侵すため、関節の疼痛、しびれ、運動障害などの症状は多発性で、その部位は遊走し、固定しません(これらは風邪の特徴です)。行痺のことを風痺(ふうひ)とも呼びます。風邪を除去する漢方薬で、関節リウマチの治療を進めます。

 関節が重だるく、痛みやしびれが生じている部位がいつも同じ(固定性)で移動しないなら、「着痺(ちゃくひ)」証です。湿邪による痺証です。湿邪が盛んなため、重く滞り停滞しやすく、固定性で重だるい痛みを呈します(これらは湿邪の特徴です)。手足の重だるさ、動かしにくさ(関節の運動障害、こわばり)、むくみ、皮膚のしびれなどを伴います。関節に水がたまり(関節液)、腫れることもあります。梅雨などの湿度の高い季節や環境、低気圧の接近などで症状が悪化します。朝起きた時など、動き始める時に痛むのも特徴です。着痺のことを湿痺(しっぴ)ともいいます。湿邪を除去する漢方薬で、関節リウマチを治します。

 強い固定性の痛みがあり、特に冷えた環境などで痛みが悪化するなら、「痛痺(つうひ)」証です。寒邪が侵入することにより生じる痺証です。寒邪は気血を凝滞させやすいため、固定性の激しい疼痛が生じます。痛みは、寒い日や冷房の効いた場所などで冷えると強くなり、お風呂に入るなどして温めると楽になります(これらは寒邪の特徴です)。冷え症で、局所や全身に冷えを感じます。痛痺のことを寒痺(かんぴ)とも呼びます。寒邪を除去する漢方薬で、関節リウマチの治療を進めます。

 患部の発赤、熱感、腫脹などが顕著なら、「熱痺(ねっぴ)」証です。熱邪による痺証であり、熱邪が強いため、発赤や熱感などの熱証が表れます。症状は冷やすと軽減します(これらは熱邪の特徴です)。熱邪を除去する漢方薬で、関節リウマチを治療します。

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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