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ドライアイに効く漢方(1)
ドライアイの考え方と漢方処方

2018/09/07

 ドライアイは、涙の分泌量が減ったり、涙の質が低下したりすることにより、目の表面の潤いが低下したり、目の表面が滑らかでなくなったりして、目の不快感や視力低下など視機能の異常が生じる疾患です。

 ドライアイは、パソコンやスマートフォンの普及などにより、年々増加傾向にあるといわれています。パソコンやスマホのモニターを見続ける時間が増えたり、まばたきの回数が減ったりすることにより、ドライアイは悪化していきます。コンタクトレンズの装用や、エアコンの使用、長時間の運転、加齢、夜更かしや睡眠不足、たばこの煙、シェーグレン症候群などの疾患、ある種の薬の副作用によっても悪化します。

 症状としては、涙の分泌量が減ることにより、目が乾燥します。また涙の質が低下して目の表面が滑らかでなくなることにより、目がごろごろする異物感、目の痛み、まぶしさが生じます。さらに、涙による目への酸素や栄養の供給が不十分になると、目のかすみ、目の疲れ、視力低下などが起こります。

 目の表面は、目の粘膜の上を涙の成分である水分や粘液性の物質(ムチン)が覆い、さらにその外側を油層が覆っています。西洋医学では、涙に近い成分で潤いを持たせたり粘膜を保護したり保水したりする点眼薬を使い、症状を緩和させます。目頭にある涙の排出口(涙点)をシリコンなどでふさぐ治療法が行われることもあります。

 中医学では「(かん)は目に開竅(かいきょう)する」といい、目を五臓の肝と関係が深い器官として捉えています。肝は五臓の1つで、体の諸機能を調節し、情緒を安定させる働き(疏泄[そせつ])を持ちます。自律神経系と関係が深い臓腑です。開竅とは、五臓の機能が反映されやすい器官のことを指します。目のことを肝竅(かんきょう)ともいいます。

 さらに「涙は肝液である」ともいい、涙は眼を潤し、目に開竅する肝と深い関係にある津液(しんえき)と捉えています。津液とは、人体の正常な生理活動に必要な水液のことです。

 従って漢方では、主に肝の血(けつ)や津液を補うことにより、ドライアイの治療をします。血とは、全身を滋養する作用、およびその物質的基礎のことです。血液や、血液が運ぶ栄養、あるいは循環に近い概念です。

 ドライアイの証には、以下のようなものがあります。

 目がごろごろする異物感が強いようなら、「肝血虚(かんけっきょ)」証が考えられます。五臓の肝において必要とされる血液や栄養(肝血)が不足している体質です。涙を構成する成分の不足や栄養障害により、涙の質が低下し、目の表面が滑らかでなくなり凸凹している可能性があります。目のかすみ、まぶたがピクピクする、などの症状もみられます。この体質の人には、肝血を補う漢方薬を用いてドライアイを治療します。

 目の乾燥が顕著なようなら、「肝陰虚(かんいんきょ)」証です。肝の陰液(肝陰)が不足している体質です。陰液は、人体の構成成分のうち血・津液・精を指します。慢性疾患や、ストレス、緊張の持続、激しい感情の起伏などの影響で陰液が消耗すると、この証になります。目の痒み、目のかすみ、目がちくちくする、めまい、耳鳴り、頭重感などの症状もみられます。肝の陰液を補う漢方薬で、ドライアイを治療します。

 加齢に伴い生じたドライアイなら、「腎陰虚(じんいんきょ)」証です。腎は五臓の1つで、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精(せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖、並びに水液や骨をつかさどる臓腑です。この腎の陰液(腎陰)が不足している体質が、腎陰虚です。加齢や過労、不規則な生活、大病や慢性的な体調不良、性生活の不摂生などによって腎陰が減ると、この証になります。のぼせ、寝汗などの熱証がみられます。この証の場合は、腎陰を補う漢方薬でドライアイを治します。

 ドライアイに視力低下を伴うようなら、「肝腎陰虚(かんじんいんきょ)」証です。腎は精をもとに血を生み出す臓腑であるため、「腎は血を生ず」といい、血に関して腎と肝とは深い関係にあります。そしてこれら肝と腎の陰液が不足している体質が、この証です。過労、生活の不摂生、大病や慢性的な体調不良、加齢などにより、肝腎両方の陰液が減ると、この証になります。目の充血もみられます。この証には、肝腎の陰液を補う漢方薬を使います。

 精神的なストレスや感情の起伏などが引き金となって生じたと思われるドライアイなら、「肝火(かんか)」証です。五臓の肝の機能(肝気)が、ストレスなどの影響によりスムーズに働かなくなり鬱滞し、肝鬱気滞(かんうつきたい)証となって熱邪を生み、それが涙を蒸発させ、ドライアイを生じさせます。強い熱邪の影響で、耳鳴り、のぼせ、頭痛、怒りっぽい、興奮しやすい、などの熱証を伴います。漢方薬で肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにし、肝火を鎮め、ドライアイを治療していきます。

■症例1

「目がごろごろして気になるので眼科を受診したところ、ドライアイと診断されました。このところ抜け毛も増えており、年齢を感じます」

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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