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手荒れ・手湿疹(主婦湿疹)に効く漢方(1)
手荒れ・手湿疹(主婦湿疹)の考え方と漢方処方

2017/12/13

 乾燥や水仕事により手の皮脂や角質が減ることで生じる手の湿疹を手湿疹といいます。主婦に多くみられるので「主婦湿疹」とも呼ばれています。水とともにお湯や洗剤もよく使う美容師や調理師などの職業の人にもみられることが多い疾患です。症状が軽い「手荒れ」も含めて、皮膚の見た目だけでなく、痒みや痛みなどに悩む人は少なくありません。

 はじめのうちは乾燥してかさかさしたり、皮膚が硬くなったりする程度ですが、次第に皮膚片が剥がれ落ち(落屑)、小水疱やひび割れ(亀裂)が生じるようになり、慢性化すると、ざらざら、じくじくし、強い痒みを伴うようになります。指紋がなくなったり、爪が変形したりする場合もあります。

 一般にこのタイプの湿疹は、合成洗剤などによる接触皮膚炎(かぶれ)の一種(進行性指掌角皮症)として捉えられています。それ以外には、痒みを伴う小水疱ができて皮がむける汗疱状湿疹や、膿がたまった水ぶくれ(膿疱)が手のひらや足の裏に多く生じる掌蹠膿疱症も、同じく手が荒れて湿疹が生じる疾患です。

 西洋医学では一般に、皮膚の炎症を抑えるステロイド外用薬や保湿剤が処方されますが、漢方では手荒れ・手湿疹(主婦湿疹)に対しても、患者一人ひとりのを考慮して処方を判断します。

 ただし、このタイプの湿疹は、乾燥や水仕事などの外的要因が強く関係していますので、患者の体質という全体的な証だけでなく、手の湿疹の局所的な証も同時に考慮する必要があります。

 手荒れ・手湿疹(主婦湿疹)によくみられる証には、以下のようなものがあります。

 皮膚が乾燥して薄くなり、かさつき、ひび割れ、あかぎれを伴うような手荒れや湿疹なら、「血虚(けっきょ)」証です。(けつ)は、人体の構成成分の1つで、血液や、血液が運ぶ栄養という意味があります。この血の量が欠乏している状態が、血虚です。皮脂の分泌が滞り、皮膚が乾燥しています。落屑や肥厚も生じます。漢方薬で血を補い、手荒れや湿疹を治していきます。体内から患部に栄養を行き渡らせるイメージです。

 血虚の症状に加え、痒みが強いようなら、「血虚生風(けっきょしょうふう)」証です。血虚に伴い、病邪の1つである風邪(ふうじゃ)が生じている証です。風邪は、自然界の風により生じる現象に似た症候を引き起こす病邪で、痒みが生じることが多いのが特徴です。漢方薬で血を補いつつ風邪を除去し、手荒れや湿疹を治療します。

 血虚の症状に加えて、皮膚が赤くなる(紅斑)、手が熱く感じる、などの熱証もみられるようなら、「血虚血熱(けっきょけつねつ)」証です。血を補い、熱毒を冷ます漢方薬で、手荒れや湿疹を治します。熱毒は、化膿性、あるいは激しい炎症に相当します。

 血虚の症状に加えて、手のほてり、湿疹の肥厚や角化(角質化)、色素沈着などがみられるようなら、「血虚血瘀(けっきょけつお)」証です。血虚に加えて血流が鬱滞している状態です。血を補い血行を促進する漢方薬で血流を改善し、手荒れや湿疹の治療を進めます。

 血虚が進んで陰液が消耗し、乾燥がさらに進行して「陰虚火旺(いんきょかおう)」証となる場合もあります。陰液とは、人体の構成成分のうち、血・津液(しんえき)・精(せい)を指します。陰液が消耗すると、相対的に熱邪が旺盛になり、熱感などの熱証が表れます。虚熱タイプです。漢方薬で陰液を潤し、熱証を冷ますことにより、手荒れや湿疹を治療していきます。

 強い痒みがあり、湿疹が広がる傾向にあるようなら、「風湿熱(ふうしつねつ)」証です。風湿熱は、風邪と湿邪と熱邪が結合したものです。風邪には、前述の痒みのほかに、患部があちらこちらと移動しやすく(遊走性)、また患部が拡大しやすいという特徴があります。風湿熱を除去する漢方薬で、手荒れや湿疹を治します。

 汗疱状湿疹など、痒みを伴う小水疱ができて皮がむけるようなタイプの湿疹なら、「痰湿(たんしつ)」証です。痰湿というのは、体内にたまった過剰な水分や湿気のことです。痰湿が皮膚で水疱や糜爛(びらん)を形づくります。痰湿を取り除く漢方薬で、手荒れや湿疹を治していきます。

 掌蹠膿疱症など、膿がたまった水ぶくれ(膿疱)が手のひらや手首に多く生じるタイプの湿疹なら、「湿熱(しつねつ)」証です。湿熱は、熱邪と湿邪が結合したものです。漢方薬で湿熱を除去し、手荒れや湿疹を治療していきます。

■症例1

「主婦湿疹で、手が荒れています。指先も手のひらも乾燥してかさつき、ひび割れが生じています」

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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