DI Onlineのロゴ画像

男性更年期障害(LOH症候群)に効く漢方(1)
男性更年期障害の考え方と漢方処方

2017/09/11

 男性も女性と同様、加齢とともに性ホルモンの分泌量が減り、精神的・肉体的な症状が表れることがあります。これが男性更年期障害です。加齢男性性腺機能低下症候群LOH症候群)とも呼ばれます。

 男性の場合は女性と違い、性ホルモンの減り方が緩やかであることも関係し、大きな体調の崩れを感じる人は女性ほど多くはありません。しかし、その体調不良が性ホルモン分泌量の減少と関わっていることに気付かず、体調がすぐれないまま悶々と過ごす人が多いのが特徴です。

 よくみられる症状は、精神的には集中力や意欲の低下、不眠、抑鬱状態、不安、いらいらなど、肉体的には疲労倦怠感、ほてり、発汗、性機能の低下、筋力の低下などがあります。

 男性更年期障害(LOH症候群)は男性ホルモンの低下と関係が深いということから、西洋医学では男性ホルモンの一種であるテストステロンの投与などが行われます。

 漢方では、男性更年期障害は五臓の腎(じん)と関係が深い疾患と捉えています。腎は、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精(せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖、並びに水液や骨をつかさどる臓腑です。従って男性の性機能や、男性ホルモン量は、腎の状態に大きく左右されることになります。

 腎の機能(腎気)は、年齢とともに弱まります。これは自然なことです。しかし腎気が安定していれば、更年期の性ホルモン分泌量減少による体調の悪化を感じずに過ごすことができます。

 男性更年期障害によくみられる証には、以下のようなものがあります。

 1つ目は「腎陰虚(じんいんきょ)」証です。陰は陰液のことで、人体の構成成分のうち、(けつ)・津液(しんえき)・を指します。この腎の陰液(腎陰)が不足している体質が、腎陰虚です。腎陰は、性ホルモンとも関係が深い概念です。加齢だけでなく、過労、不規則な生活、大病や慢性的な体調不良、性生活の不摂生などによっても腎陰が減ってこの証となり、知能や思考力、集中力が減退し、健忘や脱毛などが生じます。陰液の不足により相対的に陽気が亢進するため、のぼせ、手足のほてり、寝汗などの熱証が表れます。性機能障害では、性欲はあるが持続しないようなタイプです。この証の場合は、腎陰を補う漢方薬で男性更年期障害を治します。

 2つ目は「腎陽虚(じんようきょ)」証です。腎の陽気が不足している体質です。陽気とはのことで、人体の構成成分を陰陽に分けて考える場合、陰液と対比させて気のことを陽気と呼びます。加齢や、生活の不摂生、過労、慢性疾患による体力低下などによって人体の機能が衰え、冷えが生じてこの証になります。腎陽が虚弱になると、性機能やホルモン内分泌機能が低下し、男性更年期障害になります。腎陰虚証と同様に、知能や思考力、集中力が減退し、健忘や脱毛などが生じ、さらに冷え症、寒がり、頻尿などの寒証を伴います。性欲の減退もみられます。腎陽を補う漢方薬で男性更年期障害に対処します。

 3つ目は「脾気虚(ひききょ)」証です。消化吸収や代謝をつかさどり、気血(エネルギーや栄養)の源を生成する五臓の脾の機能(脾気)が弱い体質です。生命エネルギーを意味する気(き)が不足することにより、元気がなくなり、やる気が起こらず、無気力、無関心になります。また「脾は肌肉(きにく)をつかさどる(脾気が充実していれば筋肉は壮健である)」といいますが、脾気虚証になると肌肉が痩せて軟弱になり、筋力が衰えます。加齢、過労、生活の不摂生、慢性疾患などにより脾気を消耗すると、この証になります。漢方薬で脾気を強めて男性更年期障害の治療を進めます。

 4つ目は「心血虚(しんけっきょ)」証です。心(しん)は五臓の1つで、心臓を含めた血液循環系(血脈)と、人間の意識や判断、思惟などの人間らしい高次の精神活動(神志[しんし])をつかさどります。その心の機能(心気)を養う心血が不足しているのが、この体質です。加齢や、過度の心労、思い悩み過ぎ、過労が続くことなどにより心に負担が掛かり、心血が消耗してこの証になります。心血の不足により神志が不安定になり、不眠、不安、健忘、抑うつ状態などが生じます。漢方薬で心血を潤し、男性更年期障害を治療していきます。

■症例1

「仕事でつまずいた頃から、夜中に何度も目が覚めるようになりました。心療内科を受診したところ、うつ病と診断され、しばらく抗うつ薬を服用しましたが、効果はありませんでした」

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

この記事を読んでいる人におすすめ