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2人目不妊に効く漢方(1)
2人目不妊の考え方と漢方処方

2016/11/07

 第1子を妊娠、出産した後、第2子を希望しているのに2年以上たっても妊娠しない状態を、続発性不妊症と呼びます。いわゆる「2人目不妊」です。 「1人目を妊娠、出産できたので、2人目も簡単にできるだろうと思っていたが、なかなか妊娠できない」というケースが多いようです。この2人目不妊も、晩婚化などの影響により、第1子の不妊症(原発性不妊症)と同様、増えています。

 1人目を妊娠、出産した後の状態での妊娠なので、1人目の場合とは体質も環境も異なります。漢方を用いた不妊治療も、1人目とは異なったアプローチが必要となります。

 2人目不妊によくみられる証には、以下のようなものがあります。

 1人目の出産により体力や生命力の消耗が尾を引いているために、2人目をなかなか妊娠できないようなら、「腎陰虚(じんいんきょ)」証です。腎は五臓六腑の1つで、その機能(腎気)は、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精(せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖、並びに水液や骨をつかさどることです。陰は陰液のことで、人体の構成成分のうち、血(けつ)・津液(しんえき)・精を指します。腎の精や血を、腎精、腎血とも呼びます。女性ホルモンとも関係が深い概念です。これら腎の陰液(腎陰)が不足している体質が、腎陰虚です。腎精や腎血は出産により大きく失われるので、出産の直後に腎陰虚に陥ることは少なくありません。一般には産後、次第に体力が回復すると、この証からも立ち直ります。しかし体調の回復がゆっくりだったり進まなかったりすると、腎陰虚の状態が続き、その結果、妊娠できなくなります。この証の場合は、腎の精気などの腎陰を補う漢方薬で2人目不妊を治します。

 育児ストレスによる2人目不妊もよく見掛けます。「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証です。体の諸機能を調節(疏泄[そせつ])する臓腑である五臓の肝の機能(肝気)が、スムーズに働いていない体質です。一般に、ストレスや緊張の持続、激しい感情の起伏などの影響で肝気が失調することにより、この証になります。産後は、育児の負担やストレス、義父母、両親、ご近所との人間関係の変化や煩雑さなどにより、一気に肝気が鬱滞しやすい時期です。そして肝鬱気滞の影響でホルモンバランスや自律神経系が失調し、妊娠しにくくなります。漢方薬で肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにし、2人目不妊を治療します。

 育児疲れによる2人目不妊なら、「気虚(ききょ)」証です。気は人体の構成成分の1つで、生命エネルギーに近い概念です。この気が適量、さらさらと体内を流れていれば健康ですが、量が少なくなったり、流れが悪くなったりすると、体調を崩します。そしてこの気の量が不足している体質が、気虚です。産後は育児で急に増える肉体的疲労や、夜間に赤ちゃんに起こされて続く慢性的な寝不足などにより、気虚に陥りやすい期間です。気が足りず疲れた状態では、なかなか妊娠には至りません。気を補う漢方薬で、2人目不妊を解消します。

 分娩時の出血が尾を引いて、なかなか次の妊娠に至らない場合もあります。「血虚(けっきょ)」証です。血(けつ)は、気と同じく人体の構成成分の1つで、血液や、血液が運ぶ栄養という意味があります。気同様、適量がさらさらと流れていると我々は元気ですが、量が不足していたり、流れがどろどろとしていたりすると、体調不良や病気になります。そしてこの血の量が欠乏している体質が、血虚です。分娩の際の出血により血虚証となり、血を十分補えないままでいると、次の妊娠は難しいでしょう。血虚に伴う下垂体機能不全などによる排卵障害も考えられます。この場合は、漢方薬で血を補い、2人目不妊を治していきます。

 忘れてはならないのが、加齢による不妊です。妊娠する確率は、年齢とともに低下します。生殖をつかさどる五臓の腎の機能が加齢により低下するからです。これを「腎虚(じんきょ)」証といいます。2人目のときは、1人目の妊娠、出産時より、間違いなく年を重ねています。つまり腎虚が進んでいます。腎を補う漢方薬で、2人目不妊に対処します。なお、高齢不妊の漢方治療については、様々な要因や証を考慮する必要がありますので、別の機会に詳しく解説します。

■症例1

「2人目をなかなか授かりません。1人目は3歳になりました」

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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