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無月経に効く漢方(1)
無月経の考え方と漢方処方

2015/12/24

 無月経は、妊娠中や授乳中ではないのに、あるいは閉経を迎える年齢でもないのに、3カ月以上に渡り生理が来ない状態です。18歳になってもまだ初潮を迎えない場合も、無月経です。

 無月経と関係が深いものの1つは、「血(けつ)」です。血は、人体を流れる構成成分の1つで、血液や栄養のことです。この血の量が減ったり流れが悪くなったりすると、月経が来なくなります。血の流れを推動する「気」の失調も、無月経に関係してきます。

 五臓の腎(じん)も無月経に関係があります。腎の機能(腎気)は、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精(せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖、ならびに水液や骨をつかさどることです。また「腎は血を生ず」といい、血を生み出す臓腑の1つでもあります。この腎気が失調することにより、無月経が生じます。

 無月経の証には、以下のようなものがあります。

 まずは、もともと虚弱なために生理がなかなか来ない「腎虚(じんきょ)」証です。腎が貯蔵する精は血の生成源の重要な1つですが、その精が少ないために血が不足し、経血量が減り、無月経になっています。生活の不摂生、過労、慢性病による体力低下、加齢などによっても、この証になります。漢方薬で腎の機能を補い、ホルモンバランスを調えて、無月経を改善します。

 過度のダイエットや拒食症も、無月経の引き金になります。血そのものや気の量が不足している「気血両虚(きけつりょうきょ)」証です。この証は、「気虚(ききょ)」と「血虚(けっきょ)」が同時に生じている状態です。気虚は生命エネルギーを意味する「気」が不足している体質で、過労、生活の不摂生、慢性疾患などにより気を消耗すると、この証になります。血虚は人体に必要な血液や栄養を意味する「血」が不足している体質で、偏食など無神経な食生活、胃腸機能の低下、出血、慢性疾患などにより、この証になります。気と血の両方を補う漢方薬を使い、無月経の根本治療を進めます。

 血虚が長期化するなどして体内の陰液が減り、無月経となる場合もあります。陰液とは、人体の構成成分のうち、血・津液(しんえき)・精を指します。陰液が消耗すると、相対的に熱邪が旺盛になって機能が亢進し、熱証が表れるのが特徴です。この証を、「陰虚火旺(いんきょかおう)」といいます。慢性的な体調不良や過労、生活の不摂生、緊張の連続、老化などにより、この証になります。特に午後から夕方、夜間にかけて熱感が生じます。めまい、動悸、怒りっぽい、などの熱証を伴います。漢方薬で陰液を潤し、熱証を冷ますことにより、無月経を改善していきます。

 ストレスから無月経になる場合も少なくありません。ストレスの影響で生理が止まっているようなら、「気滞血瘀(きたいけつお)」証です。まずストレスや緊張が持続すると、身体の諸機能を調節(疏泄[そせつ])する臓腑である五臓の肝(かん)の機能(肝気)が滞って「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証になります。肝気の流れの悪化の影響がホルモンバランスの失調に及び、生理が乱れます。さらに気の流れの停滞の影響で血流も鬱滞すると、「血瘀(けつお)」証にもなります。これが気滞血瘀です。血行が悪くなるために経血量が減り、無月経になります。漢方薬で肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにし、さらに血行を促進し、鬱血を取り除き、無月経を治療します。

 もう1つ、「痰湿(たんしつ)」証の無月経も少なくありません。痰湿というのは体内にたまった過剰な水分や湿気のことです。食べ過ぎ、食事の不摂生、過度の飲酒などにより、この証になります。痰湿が血の流れを阻害するため、経血量が少なくなり、無月経になります。痰湿を取り除く漢方薬で体質を改善し、無月経を治していきます。

■症例1

「半年前に家族が病気で入院して以来、生理が止まってしまいました」

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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