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鼻づまりに効く漢方(1)
鼻づまりの考え方と漢方処方

2015/03/09
野村和博

 鼻づまりは、鼻腔を通る空気の流れが悪くなって生じる症状です。原因としては、鼻中隔湾曲症など、鼻の骨や軟骨の変形などによって生じる場合もありますが、多くの場合、鼻腔内の粘膜の腫れに原因があります。

 鼻腔内の粘膜には、たくさんの毛細血管が通っています。それらの毛細血管は、鼻炎、副鼻腔炎といった炎症などによって拡張し、その結果鼻腔内の粘膜が腫れ、鼻づまりが生じます。

 漢方には「肺は鼻に開竅(かいきょう)する」という言葉があり、鼻は五臓の肺と関連が深い器官と捉えています。鼻のことを肺竅(はいきょう)ともいいます。五臓の肺は、呼吸、体液の代謝、体温調節などをつかさどる機能であり、これらの不調が鼻に反映され、鼻づまりという症状が生じます。

 肺は直接外気と接するので、外界の風邪(ふうじゃ)、寒邪(かんじゃ)といった病邪の影響を受けやすいのも特徴です。外界からの病邪によって引き起こされる病変を外感病(がいかんびょう)といいますが、この外感病の影響により鼻の機能が乱れ、鼻づまりになることもよくあります。風邪や寒邪は、ウイルスや細菌などによる感染症に近い概念です。

 漢方では、鼻づまりの根本原因となっている五臓の肺の機能を漢方薬で立て直すことにより、鼻づまりを治療します。肺の機能には、五臓の肝(かん)や腎も深く関わっており、必要に応じてそれらの機能の改善も進めます。外感病による鼻づまりの場合は、風邪や寒邪を漢方薬で除去します。

 鼻づまりの証には、以下のようなものがあります。

 一つ目は「肺熱(はいねつ)」証です。肺は五臓の一つで、呼吸・水分代謝・体温調節などの機能を有しています。その肺に熱がたまるとこの証になり、鼻づまりが発生します。副鼻腔炎にみられやすい証です。肺熱を除去する漢方薬で、鼻づまりを治します。

 二つ目は「水飲(すいいん)」証です。水飲は体内の過剰な水分や湿気の一種で、飲食の不摂生や疲労、慢性的な体調不良などにより、この証になります。この水飲が上昇して鼻腔内の粘膜に集まり、鼻粘膜が腫れると鼻づまりになります。水飲を除去する漢方薬で、鼻づまりを解消させます。

 三つ目は「腎陰虚(じんいんきょ)」証です。成長・発育・生殖および水液や骨をつかさどる、腎の陰液が不足している体質です。陰液とは、人体の構成成分のうち、血(けつ)・津液(しんえき)・精(せい)を指します。精は、腎に貯えられる生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質のことです。加齢や過労、不規則な生活、大病や慢性的な体調不良などにより、この精が減ると、肺を潤すことができなくなります。すると、相対的に生じる虚熱により、鼻づまりが生じます。腎の精気などの腎陰を補い、虚熱を冷ます漢方薬で、鼻づまりを治します。

 四つ目は「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証です。体の諸機能を調節(疏泄[そせつ])する臓腑である、肝の気(肝気)の流れが滞っている体質です。ストレスや緊張が持続するとこの証になります。肝気の流れが悪化し、その影響が肺に及ぶと、肺の水液調節機能が乱れて鼻粘膜に水液がたまり、鼻づまりになります。漢方薬で肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにし、鼻づまりを治していきます。

 五つ目は「血瘀(けつお)」証です。血流が鬱滞しやすい体質です。ストレスや冷え、体内の過剰な水分、生理機能の低下などにより、この証になります。疾患が慢性化して長引いて血流が悪くなり、この証になる場合もあります。血行が悪くなるために熱が上半身に鬱積し、また血行不良により鼻粘膜にて水液の滞留も生じ、鼻づまりが生じます。血行を促進し、鬱血を取り除く漢方薬で、鼻づまりを治療します。

 このほか、外感病による鼻づまりがあります。

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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