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のぼせ・ほてり(熱感)に効く漢方(1)
のぼせ・ほてり(熱感)の考え方と漢方処方

2015/02/06
野村 和博

 顔や首などの上半身がのぼせたり、手のひらや足の裏などがほてったり、あるいは夕方から体の全体がほてったりと、かぜを引いたわけでもないのに熱感が生じることがあります。たまに緊張したときに頭がのぼせるような、一時的な症状ならさほど気にはなりませんが、このような熱感が慢性的に繰り返すようなら、それは不快なものです。慢性的な病気や体調不良が陰に隠れているかもしれません。

 熱感の原因は、暑熱の性質を持つ病邪である熱邪(=火邪:かじゃ)です。寒熱のバランスが崩れて熱感が生じる場合もあれば、熱を冷やす働きのある体液(陰液)が少ないために相対的に熱が勢いを増して熱感が生じる場合もあります。五臓六腑の機能バランスが失調している場合もあります。いずれにしても、かぜなどの感染症にみられるような、単純に熱邪だけが強くなって高熱が発生しているケースとは異なる状態です。

 熱があれば冷たいもので冷やせば済む、というのも一つの考えではありますが、それは一時的な対処法でしかありません。漢方では、寒熱のバランスが悪い場合はそのバランスを調え、陰液が少ない場合は陰液を補うなどして、熱感を根本的に解消していきます。それは、熱感の原因となっている体質の改善にもつながります。熱邪が発生した元の原因から、不快な熱感を改善していくのです。

 のぼせ・ほてり(熱感)の証には、以下のようなものがあります。

 一つ目は「肝火(かんか)」証です。五臓の一つ、肝(かん)の機能(肝気)が、強いストレスや緊張、激しい感情の起伏などの影響で失調すると、肝気の流れが鬱滞して熱を帯び、この証になります。肝は、体の諸機能を調節(疏泄:そせつ)する臓腑です。自律神経系や情緒の安定、気血の流れと深い関係があります。のぼせ、ほてりなどのほか、いらいら、怒りっぽい、不眠、顔面紅潮などの症候もみられます。更年期の女性によくみられる証です。肝気の流れを良くして肝火を鎮める漢方薬を使います。

 二つ目は「心火(しんか)」証です。人間の意識や思惟など、高次の精神活動(神志:しんし)をつかさどる五臓の心(しん)が、過度の刺激を受けて亢進し、熱を帯びて心火となり、のぼせやほてりが引き起こされている状態です。じっとしていられず、焦りを感じ、不安で落ち着きません。悶々として目がさえて眠れません。同時に気血が足りない場合は下半身が冷え、「上熱下冷」の状態になります。心火を冷ます漢方薬でのぼせやほてりを鎮めます。

 三つ目は「血瘀(けつお)」証です。血流が鬱滞しやすい体質です。精神的ストレスや、冷え、体内の過剰な水分、生理機能の低下などにより、この証になります。疾患が慢性化して長引いて血流が悪くなり、この証になる場合もあります。血行が悪くなるために熱が上半身に鬱積し、のぼせやほてりが生じます。逆に下半身は冷え、「上熱下冷」の状態となります。血行を促進し、鬱血を取り除く漢方薬で熱感や上熱下冷を治療します。

 四つ目は「陰虚火旺(いんきょかおう)」証です。人体を構成する陰液が消耗すると、相対的に熱邪が旺盛になって機能が亢進し、この証になります。陰液とは、人体の構成成分のうち、血(けつ)・津液(しんえき)・精(せい)を指します。慢性的な体調不良や過労、生活の不摂生、緊張の連続、老化などにより、この証になります。特に午後から夕方、夜間にかけて熱感が生じます。めまい、動悸、怒りっぽいなどの熱証を伴います。漢方薬で陰液を潤すことにより、熱感を解消していきます。

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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