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生理不順(量の異常)に効く漢方(1)
生理不順(量の異常)の考え方と漢方処方

2014/12/12
野村和博

 生理の量(経血量)の異常(過多月経、過少月経)と関係が深いのは、生理周期の異常(頻発月経、稀発月経)の場合と同じく、「(けつ)」です。血は人体を流れる構成成分の一つで、血液や栄養のことです。血の状態が失調すると、経血量の異常がみられるようになります。血の流れを推動する「」の失調も、経血量の異常に関係してきます。

 五臓のも関係があります。腎は人の成長・発育・生殖をつかさどるのが主な機能ですが、「腎は血を生ず」といい、血を生み出す臓腑の一つでもあります。この腎の失調から、経血量の異常が生じます。

 生理不順(量の異常)の証には、以下のようなものがあります。

 一つ目は「気虚(ききょ)」証です。生命エネルギーを意味する「気」が不足している体質です。過労、生活の不摂生、慢性疾患などにより気を消耗すると、この証になります。気の機能の一つに、血など人体に必要なものが体外に漏れ出ないようにコントロールする働き(固摂作用)がありますが、気虚になるとこの力が弱まり、出血しやすくなります(気不統血[きふとうけつ])。このため経血量が増えます。気を補う漢方薬で過多月経を治します。

 二つ目は「血熱(けつねつ)」証です。味が濃く脂肪分が多い食生活や精神的なストレス、長期の体調不良などにより、熱邪が血に侵入した証です。熱邪の影響で出血が促され、経血量が増えます。漢方薬で血熱を冷まし、過多月経を解消します。

 以上は経血量が多い場合(過多月経)の主な証です。

 三つ目は「血虚(けっきょ)」証です。人体に必要な血液や栄養が不足している体質です。偏食など無神経な食生活、胃腸機能の低下、出血、慢性疾患などにより、この証になります。血が不足しているため、経血量が減ります。漢方薬で血を補い、過少月経を治します。

 四つ目は「腎虚(じんきょ)」証です。腎は五臓の一つで、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質(精:せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖をつかさどります。精は血の生成源の重要な一つですが、その精が少ないために血が不足し、経血量が減ります。生活の不摂生、過労、慢性病による体力低下、加齢などにより、この証になります。漢方薬で腎の機能を補い、ホルモンバランスを調えて、過少月経を改善します。

 五つ目は「痰湿(たんしつ)」証です。痰湿というのは体内にたまった過剰な水分や湿気のことです。多食、食事の不摂生、過度の飲酒などにより、この証になります。痰湿が血の流れを阻害するため、経血量が少なくなります。痰湿を取り除く漢方薬で体質を改善し、過少月経を治していきます。

 以上は、経血量が少ない場合(過少月経)の主な証です。

 もう一つ、経血量の異常によくみられるものに、以下の証があります。

 六つ目は「血瘀(けつお)」証です。血流が鬱滞しやすい体質です。精神的ストレスや、冷え、体内の過剰な水分、生理機能の低下などにより、この証になります。疾患が慢性化して長引いて血流が悪くなり、この証になる場合もあります。血行が悪くなるために経血量が減って過少月経になったり、あるいは逆に血行不良により血があふれ出て過多月経になったりします。血行を促進し、鬱血を取り除く漢方薬で経血量の異常を治療します。

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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