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腰痛に効く漢方(1)
腰痛の考え方と漢方処方

2014/08/22

 腰痛は、日本人のおよそ8割が経験するという、とても一般的な病気です。腰痛の原因として、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症といった外科的な疾患が関係している場合もありますが、レントゲンやMRIでいくら検査をしても異常が見つからない場合も多く、腰痛患者の85%は原因不明の腰痛といわれています。

 腰痛の原因が特定できない場合、そこには、生活習慣、姿勢、ストレス、不安などの精神面の状態、加齢、脊椎の関節や周囲の筋肉の炎症、神経への負荷、筋肉の疲労、骨量の減少、体重の増加などが関係していると思われます。子宮筋腫や子宮内膜症、腎臓疾患が関与している場合もあります。

 腰痛、特に慢性の腰痛に深く関係しているのは、五臓の腎です。腎は、人の成長・発育・生殖をつかさどり、また体液の代謝全般をつかさどり、さらに骨をつかさどる臓腑です。そして、腰は「腎の府(ふ)」といわれる部位です。慢性的な腰痛には、多かれ少なかれ腎の機能低下が関係している場合がほとんどです。

 腰痛の証(しょう)には、以下のようなものがあります。

 一つ目は「腎陰虚(じんいんきょ)」証です。成長・発育・生殖ならびに水液、そして骨をつかさどる五臓の腎において陰液が不足している体質です。陰液とは、人体の構成成分のうち、血(けつ)・津液(しんえき)・精を指します。加齢や過労、不規則な生活、大病や慢性的な体調不良などにより、腎の精気が減って「腎の府」である腰を十分に養うことができず、腰痛が生じます。腎の精気など腎陰を補う漢方薬で腰痛を治します。

 二つ目は「腎陽虚(じんようきょ)」証です。腎陰虚と異なり、腎の陽気が不足している体質です。陽気とは気のことで、人体の構成成分を陰陽に分けて考える場合、陰液と対比させて陽気と呼びます。体の機能が衰えて冷えが生じ、腰痛が発生します。体を温めて腎陽を補う漢方薬を使います。

 三つ目は「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証です。体の諸機能を調節(疏泄:そせつ)する臓腑である五臓の肝(かん)の気(肝気)の流れが滞っている体質です。ストレスや緊張が持続すると、この証になります。肝気の流れの悪化の影響が、肝と関係が強い腎に及び、腰痛が生じます。漢方薬で肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにし、ストレス抵抗性を高め、腰痛を治していきます。

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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